3月14日、全国飼料増産協議会と日本草地畜産種子協会は都内で、平成23年度飼料用米シンポジウムを開いた。参加者は行政、消費者団体、企業などから約120名。
今回は、飼料用米の利活用の事例紹介とともに、放射性物質の汚染問題もテーマにとりあげ、農水省草地整備推進室の小倉室長は、来賓挨拶で「飼料中の放射性物質許容値を策定したが、平成23年産の牧草の処分が課題。宿題として取り組んでいく」などと述べた。
同省は、飼料用米の作付けを平成23年度の3万4000ヘクタール(18万トン)から、同32年度には8万8000ヘクタール(70万トン)に増産することを目標にしている。このため、実需者ニーズに対応した安定供給体制の構築、多収米品種・栽培技術の普及、生産コストの低減などを課題とし、産地と畜産農家、飼料メーカーとのマッチング、乾燥調製・貯留施設の整備などを基本計画にかかげている。
講演は「飼料用米をめぐる情勢と原発事故への対応について」(農水省畜産振興課:小宮英稔氏)、「放射性物質汚染後に食品安全のために取り組んだこと」(日本生活協同組合連合会:内堀伸健氏)が、それぞれ農産物と放射性物質検査の現状などを話した。
飼料用米については、3つの事例が報告された。
1:多収穫栽培と品種混入問題を解決し、耕畜連携を進める取り組み(岩手県:八幡平農業改良普及センター):平成20年からエサ米研究会を設立し、各種事業を行なってきた。県内では飼料用米1800ヘクタール、稲WCS700ヘクタールを利用した豚肉、牛肉、卵の生産・販売が行なわれている。今後の課題は、収量向上、コスト低減、保管場所の確保、などとした。
2:豚のエサからソーセージまで 自給へのこだわり(岐阜県:菖蒲谷牧場):飼料米を通じて地域との関わりが生まれ、つながりが増えた。豚の発育が促進され、脂部分がきれいな白色になる、また融点が低くなる。ハム、ソーセージなどの製造を手がけ、JA直売所や各種イベントなどで販売している。将来展望は、地域密着型の養豚経営をめざす、などと述べた。
3:飼料用米利用畜産物の普及拡大への取り組み(北海道:コープさっぽろ):卵、牛肉、豚肉、牛乳などの生産者に飼料用米を使ってもらっている。例えば、飼料米を給与した「黄金そだち」シリーズの「別海牛乳」は、穀物飼料の約10%を飼料米にしている。同牛乳は、宅配で週7000本、店舗で週2500本という売れ行き。飼料用米利用畜産物の販売比率では牛乳乳製品は約16%となっている。今後は米粉に挑戦する、とした。(文責:関東支局)