福島原発事故から学ぶ「食の安全:畜産物」 東大・食の安全研究センターが講演会
2012 年 3 月 24 日
東京大学大学院農学生命科学研究科附属「食の安全センター」が3月24日(土)、同大学構内で、「東京電力福島第一原発事故から学ぶ食の安全 畜産物について」の講演とパネルディスカッションを開いた。
同センターでは、被災地の畜産物に対して正しい理解を促すために、外部の有識者を含めた検討会、文献調査、消費者行動調査、リスクコミュニケーションツールの作成と提供などを行なってきたが、今回の催しもその一つ。
同大学大学院農学生命科学研究科の細野ひろみ准教授は、牛肉消費について調査した結果を報告した。それによると、政府の情報の信頼度は低く、女性のほうが男性よりもリスク感度が高いが、被災地域の産品を買うという回答も多いなど、とした。
富山大学大学院医学薬学研究部の近藤隆教授は、放射線基礎医学の研究者の視点で講演。「放射性物質は、通常の生活の中でも取り込まれており、その生物作用に関する研究情報は多い。線量と線量率を把握し、正しく怖がり、賢く使う(例:がん治療など)ことが求められている」などとした。
眞鍋昇教授(東大大学院農学生命科学研究科附属牧場)は、汚染牧草を乳牛に給与し、その結果、どのくらいの放射性セシウムが生乳に移行し、給与中止後にどのくらいの期間で元に戻るか、という実験結果などを報告した。
東北大学大学院農学研究科の磯貝恵美子教授は、福島原発20km圏内(警戒区域内)の牛を捕獲し、被爆牛等における放射性セシウムの測定と解析を行ない、セシウムは血液内濃度と筋肉内濃度の間に強い相関があり、血液と血中放射性セシウムから筋肉内集積量を推定できるので、屠畜前の推定技術として有用である、などと報告した。
最後に、パネルディスカッションが行なわれた。
なお上記、眞鍋教授の内容は、4月発刊の「Dairy Japan誌5月号」に掲載予定。
*取材メモ
放射性物質と畜産物の安全性に関し、これまで専門に研究してきた日本の研究者は殆どいなかった。上記も含め、多くの機関や大学では、ヒト医学・理学などの放射線の研究者、現場の土壌や飼料、家畜衛生保健所などの協力を得て、文献の解読や実証研究が進められている。今回の事故に直面し、「後世にできるだけ多くのことを、伝えることが日本の責務」と語った磯貝教授の言葉が印象的だった。(文責:関東支局)
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