二つのテーマ(環境規制、放射性物質)で畜産講演:茨城県で開かれる
2012 年 3 月 9 日
3月9日、茨城県筑西市内で、同市畜産振興協議会、家畜改良センター茨城牧場ら主催で「畜産セミナー:原発事故への技術的対応」が開かれた。約50名が参加した。
講演では、畜産をめぐる情勢について、農水省関東農政局の畜産環境対策官の蛯名広志氏が、次のように述べた。
1:飼料中の放射性セシウム許容値が4月1日から1kg当たり100ベクレルになる。敷料として稲わらを使う場合もこの数値は不変なので要注意。食品の安全・安心を担保するための事項としてとらえて欲しい。これは牛の口に入る段階まで守って欲しい数値だ(堆肥中の規制値400ベクレルは変わらない)。
2:水質汚濁防止法が、平成25年(来年)に畜産排水中の硝酸性窒素等の暫定基準値900mg/lが見直されることが予想されるので、その準備をして欲しい。環境省は良く整備された農場の数値をもっており、それが適用されると、多くの農場では厳しくなる。だから、畜産現場もデータを揃えておく必要がある。
3:環境負荷軽減、家畜排泄物の利活用による産地活性化、スーパーL資金の金利負担軽減措置などの施策があるので、関係機関に相談して欲しい。
また、畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域長の塩谷繁氏は、原発事故による技術的対応を、放射性物質の基本から、その除染技術まで詳しく解説した。
1:セシウム134の物理的半減期は約2年、同137は約30年。初期にコントロールすることが大事だ。
2:セシウムの植物への移行は、葉面吸収と経根吸収があり、今後は経根吸収が中心になる。移行率は、チェルノブイリ事故の例では、経年的に減少し、3年間で3分の1から8分の1程度に減少する。
3:家畜がエサを経て牛に移行する率はセシウムの形態や摂取方法、家畜の種類や月齢などで変わる。
4:最も効果的なセシウム対策は、土壌のプラウ耕だ。研究データでは、プラウ耕+ロータリー耕で土壌中の濃度が元の約5%まで低減している(詳しくは、畜草研のHPに掲載)。
5:酸性やアルカリ性の土壌では吸着力が弱まるので、酸性土壌では石灰を施用し、PHを6.5程度に中和する。さらにカリウムの少ない土壌では、カリウムの施肥により、植物へのセシウム吸収が抑制される。
6:徐々に汚染の状況が分かってきた。各種の方法を組み合わせることで、汚染低減が予測できるようになりつつある。冷静に実態を把握し、これまで続けてきた高品質な自給飼料生産にかける志を絶やさないで欲しい。
参加者からは、「今後の研究に期待する」などの声が寄せられた。(文責:関東支局)
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