「東日本大震災・原発事故と酪農乳業」シンポジウム(上):乳業界の課題が顕在化

2012 年 7 月 21 日

Filed under: — admin @ 8:01 PM ニュース

7月21日、研究者や実務家などで構成される畜産経営経済研究会(会長:小林信一・日本大学教授)は2012年度シンポジウムを開いた。テーマは「東日本大震災・福島原発事故と酪農乳業 被害状況と今後」。乳業界から日本乳業協会の小板橋正人専務理事、生産者団体から福島県酪農協の岡正宏統括部長、生産者から田中一正氏(飯館村)が講演し、その後、参加者らとの討論が行なわれた。

小板橋氏は、昨年3月から5月までの被害は240億円超と推計されるとし、緊急時の粉ミルク支援、放射性物質に対する乳業界としてのスタンスなどを述べた。そのうえで「生産から製品までの安全性の確保」、「牛乳乳製品の安定供給体制の整備」、「乳業工場の配置」の3つの課題が今回、顕在化したと説明。 

さらに、これを短期的課題として(1)乳業工場の防災機能強化、(2)育児用粉ミルクの災害対応体制の制度化、(3)生乳の安全性確保対策に、中長期的課題として(1)乳業工場の再配置・補完体制の検討、(2)トレーサビリティシステムの構築に整理し、平成24年度は短期的課題を中心に取り組み、工場稼働分科会、共通包材分科会、粉ミルク備蓄分科会を設置し、検討・議論中である、などと述べた。

福島県酪農協の岡氏は、大震災後の対応を時系列で概説したうえで、(1)放射性物質は県モニタリングがCS(クーラーステーション)単位で週1回、さらに酪農団体の自主検査がCSで週6回、ローリーで月1回行なわれていること、(2)県全体で原発事故被災酪農家は72戸、うち再開したのが11戸であること、(3)平成24年度の永年牧草は全県下で給与制限していること(年内の除染を目標とする)、(4)昨年産牧草・堆肥等の汚染廃棄物の処理が進んでいないこと、(5)県内酪農再生のため9月から稼動予定の「ミネロファーム」(本誌7月号、本欄ニュース5月23日参照)にも触れ、今後さらに2つの大型経営体をつくりたいこと、などを述べた。(つづく:文責・関東支局)

北海道:万が一の計画停電に備えて

Filed under: — djito @ 10:07 AM ニュース

北海道では来週7月23日から節電期間となり、
万が一、電力需給がひっ迫した場合は計画停電が実施されることになる。
そこで北海道農政部は、「農業分野における計画停電に備えた営農技術対策」と題して、
計画停電の事態に至った場合に備えて、事前の準備を呼びかけ、対策事項を示している。

その中の全作目共通項目としては、
(1)糞尿処理やハウスの開閉など電動機器を利用した作業や栽培管理は、各地域の停電時間を確認し、その影響が最小限にとどまるよう、作業時間の調整を行なうなどして、計画的に実施する。
(2)自動制御機器などは、運転中に停電になると故障の原因となる場合があるので、停電前に電源を切っておく。併せて主電源も切り、事故の発生防止に努める。
(3)発電機等ふだん使用しない機器を用いる場合は、計画停電の前に事前点検を行ない、十分な燃料を確保しておく。
(4)コンピュータ等でデータを管理している場合は、停電によりデータが欠損しないよう、事前にバックアップを取った後、電源を切っておく。
(5)通電後は、各種機器の復帰(リセット)を行ない、誤作動がないか確認する。

酪農・畜産では、
(1)停電を考慮した作業計画
停電開始と終了時間を確認して、搾乳やライン洗浄、放牧時間の設定及び必要となる作業を計画的に行なう。
(2)搾乳時間
搾乳時間帯に計画停電となる場合は、搾乳終了後2時間以上の冷却時間が確保できるよう、搾乳時間を変更する。ただし、乳量・乳質への影響が少なくなるよう、前回からの搾乳間隔を16時間以内とする。
(3)搾乳後の冷却
搾乳後、生乳の冷却が不十分なまま計画停電となった場合の出荷の可否は、通電後に乳温を確認したうえで、農協等の指示に従う。
(4)放牧
電気牧柵で放牧を実施している場合は、脱柵を防止するためにバッテリー式やソーラーパネル付きの電牧器を用いる。
(5)発電機の利用
発電機を利用して搾乳作業やバルククーラー等を稼働する場合、電気の逆送や通電再開時の機器破損等を防ぐために、必ず電源切替器を設備したうえで使用する。また、必要電力に対して十分余裕を持った発電機器を用いる。
(6)給水管理
水槽の給水にポンプを用いている場合は、タンク等を用意して飲料水を貯留しておく。
(7)電力を要しない暑熱対策
ア)窓を開放するなど、畜舎内の風通しを良くし、換気を促進する。
イ)畜体の毛刈りなどを行ない、体温の上昇を防ぐ。
ウ)畜舎の南側は、遮光ネット等を設置して、直射日光をさえぎる。

Copyright (C) 2005 Dairy Japan Corporation. All Rights Reserved.