「東日本大震災・原発事故と酪農乳業」シンポジウム(下):復興のエンジンとして
2012 年 7 月 22 日
21日既報の「東日本大震災・原発事故と酪農乳業」シンポジウムでは、田中一正氏(飯館村・酪農家)が、酪農再生のための「ミネロファーム」(名称は地名に由来)について語った。田中氏は東京出身で、栃木県の大型酪農場勤務を経て、10年前に新規就農。堆肥を通して、地域(集落)循環型の酪農を営んでいた・・・あの日まで。
ミネロファームは、ダノングループのエコファンド等の協力を得て進められたプロジェクトで、事業主体として、NPO法人福島農業復興ネットワークが建設・運営する。田中氏は同ファームの管理責任者。同ファームは、(1)共同酪農経営モデルの実践、(2)被災酪農家の雇用創出(5名の運営員、9名の従業員)、(3)福島県酪農の復興と生産基盤の確保、(4)酪農の魅力の伝道、(5)エコロジカルファームの調査を目的とし、福島市内の既存牛舎(フリーバーン、フリーストール)を改修し、生乳生産を行なうもの。
田中氏は「被災仲間の思いを噛み締めながら、一丸となって取り組みたい。酪農は、ものすごく頭を使う肉体労働の職業と思っている。私の役割は、牛と消費者との仲介役」などと語った。
演者らをパネリストにした参加者との討論会では、
「生乳生産基盤と乳業工場の立地が局地化している現状で、サプライチェーン問題はジレンマであり、リスクでもある」、「自宅に戻りたいという気持ちがあっても、戻れないのが現実。酪農再生を模索中で、声をあげていかなければならない」、「放射性物質の国の基準値とゼロリスクを求める自主検査値のダブルスタンダード解消が難しい」、「安全・安心をどう伝えるか」などの意見が出た。
最後に、小林信一日本大学教授は、「福島県の酪農再建は、局地化しつつある日本酪農全体の再生の試みでもある」と締めくくった。(文責:関東支局)
*福島農業復興ネットワーク:ホームページ http://far-net.or.jp
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