一般社団法人中央酪農会議(以下、中酪)は、5月29日、都内で、「牛乳月間“いま、日本の酪農を考える”~飼料価格の高止まり、国際化による不安などで岐路に立つ酪農~」をテーマとした記者説明会を開催した。中酪の迫田潔専務理事は「牛乳価格を昨年10月に改定し8カ月が経った。若干減ってはいるものの、大きな生産の減少もなく、価格も、売れ崩れを大幅に起していることはない。しかし、配合飼料価格の高止まり、相場の高止まり、また、円安も続いている。そういったなかで将来を見通せないこともあり、生乳生産量が減少しているのが現状である」と日本の酪農の現状を述べ、「業界の記念日である牛乳の日、牛乳月間を期に、今一度、日本の酪農や牛乳乳製品の重要性を生活者の方々に認識いただきたいということ、今後の酪農理解醸成についての取り組みについても説明させていただきたい」と挨拶した。
会見では中酪の内橋政敏事務局長が「日本酪農を取り巻く現状について」説明した。内橋事務局長は「昨年10月より牛乳価格が値上げされるとともに、今年4月から消費増税もあったが、消費者の方々には変わらず牛乳をご愛飲いただいている。しかし、乳価引き上げ後も全国で生乳生産量は大きく減少している状況である。こういったなかで飲用牛乳を安定的に供給するため、必要な乳製品を製造することが困難なため、国は不足分を輸入して対応すると発表した。全国の酪農家は、これからも生活者の食卓に安全で安心な牛乳を安定的に届けられるよう努力し、また、酪農教育ファームをはじめとして、酪農や牛乳の価値を高められるよう取り組みを継続する。生活者には酪農が置かれた現状を理解していただき、今後も変わらぬ牛乳のご愛飲をいただきたい」とメッセージを投げかけた。
また、(株)資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表が、「世界の中の国際乳製品需給の状況と日本酪農市場」についての説明を行ない、埼玉県秩父郡の吉田牧場の吉田恭寛氏は「酪農家や乳牛が一生懸命生産した牛乳がスーパーで安く売られているのは悲しい。われわれが得る利益から再生産が可能な適正な価格になってほしいと感じる。日本の酪農現場ほど、きれいで衛生的なものはなく、われわれの生産システムは世界に誇れる安心安全なものだと思っている。これらを維持させるには、消費者の方々に考えていってもらわなければいけない。私達酪農家が自信を持って牛乳を生産していくためには、経済的な安定はもちろん、私達の生産を支持してくれる消費者の声が非常に大切である。私達のモチベーションをあげるのは、やはり消費者の応援である。正しく私達の活動や酪農の生産現場のことが伝われば必ず牛乳の消費は減ることなく増えると、私達は感じている」と、生産現場の声を伝えた。