乾物摂取量と繁殖【DairyPROFESSIONAL Vol.13より】

【乾物摂取量と繁殖】DairyPROFESSIONAL Vol.13より

高泌乳牛ほど繁殖成績が低下する、とよく言われたりしますが、はたして本当にそうなのでしょうか?じつは、最近のデータでは、個体乳量は年々増加しているものの、平均分娩間隔は430日前後で維持しています。さらに、北海道の繁殖成績を見比べると、1頭当たりの乳量が多いほど分娩間隔が短い傾向にもあるようです。

高泌乳をキープしながら繁殖成績を向上させるにはどうすればよいのでしょう?

分娩後にいかに栄養を摂れるかが繁殖に大きく影響することは周知のとおりかと思います。分娩後の負のエネルギーバランスからいかに早く回復するか?ということが重要です。低泌乳でも、エネルギーバランスが悪ければ繁殖は悪くなります。高泌乳でも、分娩後にしっかり栄養を吸収できれば繁殖は良くなるようです。

乾物摂取量(DMI)が高まり、エネルギーを十分に摂取できればOKということです。分娩後いかに素早くDMIを上げるかが鍵ですね。

分娩後のDMIを高めるには、乾乳期のDMIを下げないことが大切です。乾乳期のDMIが高いほど、分娩後も高くなる傾向にあるようです。

ここで大事なのはやはり乾乳期。乾乳期にボディ・コンディションスコア(BCS)が高いと、DMIは低くなります。過肥の牛では、脂肪が消化管を圧迫して喰えなかったり、分娩後の疾病を起こしやすかったりというリスクが伴います。

繁殖成績向上のためには、分娩後の対処では遅すぎるということになります。乾乳期で肥らせず、かつDMIを下げない飼料設計と飼養管理をすることから始めるべきなんですね。

「わかっちゃいるけど、難しいよねえ~」という意見も、よく耳にします。できるところからコツコツと。

詳しくはDairyPROFESSIONALVol.13【今、繁殖を見直そう】より

初乳は初生子牛のみに給与するものではない:DairyJapan9月号

【初乳は初生子牛のみに給与するものではない】(DairyJapan9月号p55)

初乳といえば、まず思い浮かぶのは、生まれてすぐの子牛に、給与して、母牛から子牛への免疫移行を確実に行なうためのものですよね。これは、健康な子牛を、さらには成牛になった後も健康に育つために重要な一歩です。

しかし最近は、初乳でさらに多くの成果を期待できるのではないか?ということが、研究をとおしてわかってきました。今回は、その答えにつながる情報を紹介していきます。

出生直後の子牛がIgGを吸収できるのはおよそ24時間と言われています。その期間以降に初乳を給与するのは何故なのでしょう?

ある病原体から攻撃を受けたときに、それに対処するためにIgGが腸管内に際分泌されます。すると、別の病原体が来たときに、対処できるIgGが少なくなります。初乳を継続給与することで、腸管内にIgGを継続的に補給でき、より体を護るために役立つとのことです。

それだけではありません。初乳中には子牛の健康に好影響を与える成分が数多く含まれています。

感覚的には、初乳給与後に母牛の移行乳を子牛に飲ませる行動に近いものがあります。しかし現実的に難しい場合もありますので、代用初乳粉末を使用すると、IgGなどを補給できて良い。ということです。

抗生物質使用に対して厳しい視線が集まるようになった今、予防的に初乳の継続給与をするのも選択肢の一つではないでしょうか?

DairyJapan9月号はこちら

 

 

散水で環境温度を下げる

最近は雨続きで低かった気温も、久々の晴れでぐんぐん上昇。最高気温は久しぶりに30度に届きそうな東京です。
日々の寒暖差は乳牛にとって大きなストレスですね。
さて、写真は先日訪れたK牧場での一コマ。散水を制御する装置を写したものです。
暑熱期に屋根散水をする事例を目にすることがあります。屋根散水は熱せられた屋根に水を掛けることで、その水が気化するときに熱を奪うことによって、牛舎を冷やす効果を狙ったもの。適切な使用では、牛舎内の湿度を上げることなく環境温度を下げることが期待できるものです。
K牧場は、この散水システムを牛舎の屋根以外にも、牛舎周辺のコンクリート部分や道路(許可を得て)にも設置しています。牛舎の周辺で蓄熱しやすい部分を冷やすことで、牛舎内温度はさらに下げることができるのだとか。
秋の足音が聞こえはじめる時期ですが、毎年夏はやってきます。暑熱対策の参考にされてみてはいかがでしょう?

乳牛の消化管ツアー:DairyPROFESSIONAL21

【乳牛の消化管ツアー】(DairyPROFESSIONAL22 第1章より)

先日発売した臨時増刊号DairyPROFESSIONAL21では、「乳牛の消化と吸収」をテーマに編成。

改めて消化とは?という内容から始まります。皆さんの農場では、給飼したエサはどの程度消化されているでしょうか?

ほとんどが糞として排せつされてしまっていてはエサをあげる意味がないですよね。消化率、TDNを正しく理解することで、効率の良い給飼が実現できます。

続いて、牛が食べたものはどのように消化されるのか解説。咀嚼、反芻、消化する過程を改めて理解し、飼養管理や給飼に役立ててみてはいかがでしょうか。

DairyPROFESSIONAL21はこちらから

お産の環境:DairyJapan9月号

【酪農家を楽にする 牛のためのお産】DairyJapan9月号より

放牧中の牛が分娩する際は、群れの中でなく、少し離れた草むらなどで座って分娩します。分娩後も子牛が立ち上がるまで母牛はその場で寝ていることが多いようです。

牛にとって理想の分娩環境を考えるうえで、母子ともに安全で衛生的に過ごせることが重要となります。乳牛の分娩環境を考えるにあたって整えるべき環境は三つ。・精神的環境・物理的環境・衛生的環境です。

牛は本来、群れで行動する動物なので、分娩する直前までは群れの中にいます。長期間独房で隔離生活を送るのは、牛にとってストレスが大きいと考えられます。

また寝起きがしやすい環境は、子宮捻転屋や子の不正な体位による難産リスクを低減します。静かでふかふかの寝起きしやすい牛床であれば、牛はすぐに伏臥し、寝起きを繰り返すことで分娩が進行します。

分娩数週間までの牛では、汚染による子宮炎や子宮内膜炎がよく見られ、やがて分娩後の早期受胎率の低下につながります。これは、多頭飼育されてる牛の環境が衛生的に劣悪になり、分娩時、分娩後に環境細菌の襲撃をうけた結果です。

本稿では、これらのほかにも整えるべき環境を詳細に解説し、そのうえで理想的な分娩環境についてまとめています。

理想的な分娩環境とは、

・清潔で乾燥している

・広さは最低でも20㎥以上

・段差がなく、平らで、寝起きがしやすい

etc…

詳しくはDairyJapan9月号をご覧ください。