自給飼料および畜産物への放射性物質移行とその低減:畜草研がシンポジウム

2012 年 12 月 5 日

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農研機構畜産草地研究所は5日、東京都内で「自給飼料および畜産物への放射性物質移行とその低減技術」に関してシンポジウムを開いた。東北および関東を中心に関係者ら200名以上が参加した。
これは、同研究所が蓄積した研究データを、原発事故の影響を受けた当該地域の農業の復興に資することを目的にしたもの。

基調講演で、農水省草地整備推進室長の小倉弘明氏は、原発事故発生から今日までの同省の施策を振り返るともに、被災地の飼料生産・利用体制を強化するために平成25年度に向け自給飼料生産・調製体制の再編の支援を概算要求する、などと述べた。

草地飼料作に関する研究では、山本嘉人氏(畜産草地研究所)が草地での放射性物質の低減技術として草地の完全更新(プラウによる深耕)が有効であること、原田久富美氏(同)が10アール当たり3トン程度の堆肥を継続的に施用することは飼料用トウモロコシに有効であること、天羽弘一氏(同)が、放射性物質を含んだサイレージを圃場に鋤き込んでも後作への影響は殆ど認められなかったこと(試験圃場の場合)などを報告した。

生乳への放射性物質の移行では、小林洋介氏(同)がベントナイトやゼオライト、プルシアンブルーなどのセシウム吸収阻害物質の試験結果などを報告し、これらの物質の利用については、さらなる技術的な検討が必要とした。(文責:関東支局)

自給飼料活用型TMRセンターの最新情報交換会を開く:畜草研と全酪連が主催

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農研機構畜産草地研究所と全酪連は4日、5日の両日、東京都内で「平成24年度自給飼料活用型TMRセンターに関する情報交換会」を開き、関係者ら約200名が参加した。今回のテーマは、トウモロコシサイレージ等の高栄養・高品質自給粗飼料を活用したTMRの調製・給与。

基調講演で、大下友子氏(北海道農業研究センター)は、飼料用トウモロコシの有利性と留意点を解説したうえで、イアー(雌穂)コーンサイレージの生産技術とTMRセンターでの取り組みを報告し、今後は畑作農家と連携し輪作体系を組み立てる必要があると述べた。

行政施策の紹介では、小倉弘明氏(農水省草地整備推進室長)が、コントラクターやTMRセンター関連事業の平成25年度の概算要求額などを示し、幅広い対策を推進させていくとした。

事例紹介では、北海道・有限会社ドリームアグリの奈良岡靖男氏が、北限地帯におけるサイレージ用トウモロコシ定着への現状を発表し、長期の作付け継続と再生産できる機械体系の確立が急務とした。
また、静岡県・浜名酪農協の伊藤光男組合長が、同酪農協のTMRセンターとコントラクターを報告。全酪連の田中真二郎氏が、結(ゆい:集落単位で行われる共同作業)型組織のTMRセンター例として「有限会社TMRうべつ」から共同化のTMRの可能性を示唆し、立地条件と合理的な運営が重要と述べた。さらに、北海道農業研究センターの青木康浩氏は、トウモロコシサイレージの広域流通における課題などを整理し、報告した。

技術紹介では、とう野英子氏(東北農業研究センター)が、来年から発売される予定の牧草「フェストロリウム(フェスク属とロリウム属の交配種)」(東北1号)の、耐寒性や耐湿性などの有用性について報告し、耕作放棄地などへの作付にも適しているとした。
また、橘保宏氏(生研センター)が、高速作業が可能なトウモロコシ不耕起播種機の開発について動画などを用いて発表し、平成24年度中の実用化を目指しているとした。さらに、武内徹郎氏(徳島県畜産研究所)は、大きさの異なるロールベールに対応するロールグラブの開発について報告し、直径75から120cmのロールを変形することなく保持できる試作機を披露した。

パネルディスカッションでは三輪達雄氏(全酪連)を座長に、「TMR飼料の価格設定」「エコフィードの扱い法や購入方法」「イアーコーンの位置づけ」などが話された。(文責:関東支局)

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「近未来の自給タンパク質飼料:大豆WCSとは」とう野英子 Dairy Japan 2012年4月号
「新しい国産濃厚飼料イアーコーン」大下友子  Dairy Japan 2012年9月号

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