自給飼料増産の現場報告 酪総研シンポジウム

2014 年 2 月 1 日

Filed under: — djito @ 10:29 AM セミナー報告

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雪印メグミルク・酪農総合研究所は1月31日、札幌市で酪総研シンポジウムを開催した。
酪農家をはじめ関係機関、研究者ら約300人が参加した。
今回のテーマは昨年に引き続き「国産飼料を最大限に活かした酪農の再構築」。
自給飼料増産と活用の取り組みと課題を、以下の4名が講演した。

●「実証圃場」に好成果
同研究所・田中二三男所長は、「酪農総合研究所の自給飼料生産拡大の取り組みについて」と題して講演した。同研究所は平成20年より、酪農家をはじめJA、関係機関、関係会社の協力のもと、道内外に「実証圃場」を設定。自給飼料増産と、その利活用の優位性を検証し、そこで得た改善効果を地域に波及させている。事例の一つとして、草地20%更新や施設改善をしたところ、植生改善、収量の増加、サイレージ品質の向上などにより、2年間で売り上げが1800万円増えた実証農家を紹介した。

●酪農は水田も守る
千葉県香取市の酪農家・長嶋透氏(経産牛180頭)は、「牛乳の価値-インスピレーションのその後-」と題して講演した。同氏は3年前に、稲WCSの有用性にインスピレーションを感じ取り、稲WCS確保と利活用について日本酪農研究会で発表した。今回は、その後、地域あげての稲WCS生産・利用に発展し、さらに稲WCSを主体とするTMRセンターが稼働することを紹介した。同氏は、「稲WCSを利用することで、地域と共存しながら水田(国土)を守りながらの生乳生産につながる」と語った。

●こうすれば雑草は減る
十勝管内大樹町の酪農家・太田福司氏(経産牛170頭)は、「土・草・堆肥作り」と題して講演した。完熟堆肥作り、良質な草地作りで知られる同氏は、秘訣の一つとして、独自の草地更新方法を紹介した。それは、通常であれば1番草収穫後から播種まで約2カ月のところ、1年以上かけて雑草を徹底的に退治してから播種床作りを行なう方法。それにより雑草は極めて少なく、長持ちする草地となる。同氏は、「土作り、堆肥作り、草作り、牛作りの基本を守りつつ、後継者に喜んで引き継いでもらい、より魅力ある産業にしてもらいたい」と語った。

●土・草の改善で所得向上
根室管内のJA道東あさひ・小島友喜営農センター長は、「JAにおける植生改善の取り組みについて」と題して講演した。同JAは全道の約1割の生乳を生産し、草地も全道の約1割の約5万ha。自給飼料栄養価アップにより生乳の増産、農業所得の向上を目的に、草地植生改善5カ年計画を設け、草地更新事業(表層撹拌工法)1000ha、草地活性化事業(施肥・物理性改善・追播)1000haを年間目標として取り組み、着実に成果をあげている。同氏は、「土・草の改善により、足腰の強い酪農経営確立に向けて進めている」と語った。

潜在利益を引き出す

2013 年 12 月 22 日

Filed under: — admin @ 7:05 PM セミナー報告

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オルテック合同会社は12月16-18日、北海道の札幌市、帯広市、中標津町の3市町で「オルテック・デーリィ・スクール2013」を開催した。北海道内の酪農家をはじめ、普及員や飼料会社、獣医師、関係企業・団体から約170名(3日間合計)が参加した。
ニック・アダムス氏(オルテックカビ毒研究チーム、グローバル・セールス・ディレクター)が「乳牛におけるカビ毒リスクの理解・管理・軽減」、マイク・ハッチェンス氏(アメリカ・イリノイ大学名誉教授)が「乾乳牛・未経産牛における飼養管理の最新情報」と題した二つの講演を行なった。アダムス氏は、近年、注目されてきているカビ毒について、同社の研究結果を交えて紹介した。ハッチェンス氏は、乾乳や育成時期の重要性を示し、「乾乳牛や育成牛の潜在利益をいかに引き出すかが重要だ」と話した。

詳しくはDairyJapan2月号「セミナー報告」をご覧ください。

初産・経産を考慮した移行期管理を 全酪連・酪農セミナー2013

2013 年 12 月 19 日

Filed under: — djito @ 4:30 PM セミナー報告

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全国酪農業協同組合連合会(全酪連)は全国6カ所で、「全酪連・酪農セミナー2013」を開催した。
今回のテーマは「移行期牛の栄養生理と飼養管理 パート3 -初産牛と経産牛のそれぞれに重要な飼養管理戦略- 」。
講師は、乳牛の栄養代謝や肝機能の先端研究と酪農現場への普及で活躍している、トーマス・オバートン博士(米国コーネル大学・畜産学部・教授)

「高泌乳、ボディコンディションの維持、代謝障害発生の最少化、免疫ロスの最少化、繁殖率の維持、初産牛への最適栄養、健康な子牛、収益を上げる――これらすべてを達成することは可能であると、私は信じている。そのための方策として、移行期牛の管理で最近わかってきた知見、また移行期牛としての初産牛の管理にも重点を置いて解説する」と同博士は前置きし、以下の各論に入った。

・ニューヨーク州の酪農場における移行期牛の健康とパフォーマンス
・低Ca血症とこれに関する問題を管理する要点
・乾乳牛のエネルギーと蛋白栄養において考慮すべき事項
・いかにして初産牛のパフォーマンスを最大化するか
・産褥牛飼料の戦略
・移行期牛飼養管理における環境、施設、群分け
・移行期牛プログラムにおける観察と評価
・牛群の乳量と乳成分を最大化する

詳報はDairy Japan 2月号で。

増えるTMRセンター、情報交換や共有を

2013 年 10 月 31 日

Filed under: — admin @ 8:01 PM セミナー報告,ニュース

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北海道TMRセンター連絡協議会(会長:近藤三男、事務局:(株)オーレンス総合経営)は10月31日、札幌で第8回定期総会を開催した。
開催に先立ち、近藤会長は「平成25年10月末時点で、会員数が117会員となった。今年はオホーツク管内をはじめ、天候不順や台風などの影響があったため、作物は不良と言える。そうしたなかでも、春、夏、秋にある総会や研修会などを通して、情報交換をしていってほしい。協議会会員が一丸となって各TMRセンターを運営するなかで、皆で情報交換や議論をしていきたい。今後、より良い協議会運営をしていく」と挨拶した。
定期総会では、平成24年度の事業報告ならびに事業収支報告が行なわれた。事業報告のなかで、23年の東日本大震災から継続して行なっている粗飼料支援についても報告され、24年度は合計4680個の乾草またはラップサイレージを輸送しており、今年10月末鵜現在では、通算7409個を輸送したと報告した。粗飼料支援を行ない始めた当初は無償での支援だったが、現在では有償での支援となっている。しかし、25年産の牧草については、春先の天候不順により、収穫量の不安から輸送が危ぶまれていたが、現地からの希望量は確保され、1番草、2番草ともに予約された数量は輸送を計画している。近藤会長は「お互いに顔が見えるから続けられる。今後も続けていくべきもの」と話す。
同会の広報活動の一つとして、今年10月から同会HPに「粗飼料斡旋コーナー」を開設し、TMRセンターと個人農家の粗飼料売買の橋渡しを行なっており、同会は「道産粗飼料が少しでも流通し、粗飼料自給率が向上することを期待している」としている。
さらに同会は、先述の東北地方への粗飼料支援活動を通して、支援を行なうなかで、今後の粗飼料の広域流通についての可能性なども検討していくとしている。

乳酸菌によるインフルエンザワクチンの効果上昇

Filed under: — Yayoi Uruno @ 4:00 PM セミナー報告,ニュース
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新潟青陵大学看護福祉心理学部部長・教授 新潟大学名誉教授 鈴木宏氏

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順天堂大学医学部免疫学講座准教授 竹田和由氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスコミセミナー事務局は、10月30日、都内で、マスコミセミナーを開催した。テーマは「今年のインフルエンザに賢く対応する~新たに判明した、ワクチンの効果を高める乳酸菌の作用~」。

本セミナーでは、新潟青陵大学看護福祉心理学部部長・教授 新潟大学名誉教授である鈴木宏氏が、インフルエンザとワクチンについての解説、家庭でできる予防方法等、総合的なインフルエンザ対策について講演した。また、順天堂大学医学部免疫学講座准教授の竹田和由氏は、インフルエンザワクチン接種によりできる抗体量を増やす等、1073R-1乳酸菌の、免疫に関わる作用について講演した。

鈴木宏氏は、インフルエンザワクチンの接種により、発病は防げないが重症化は防げると、ワクチンの効果を述べ、また手洗いうがい等、基本的で総合的な対策の重要性も述べた。

竹田氏の講演では、マウス試験およびヒト試験の結果から、1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトの継続的な摂取は、NK活性の増強と、インフルエンザワクチンの効果を上昇で、インフルエンザの予防に寄与しうると発表した。

 

北海道酪農技術セミナーに500人が参加

2013 年 10 月 30 日

Filed under: — djito @ 10:44 AM セミナー報告

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今回で3回目となる「北海道酪農技術セミナー」が10月28・29日、帯広市で開催され、北海道内外から約500名が参加した。
事務局長の武中慎治氏(メイプルズクレストコンサルティングサービス)は開催にあたり、「1回目は300人強が参加、2回目は400人強、3回目の今回は500人強と、年々増えている。このセミナーの目的は、酪農に関わるすべての皆さんを対象として、最新かつ実践的な技術を伝え、情報・知識を共通することにある」と挨拶した。

セミナーは「プレ・コンファレンス・ワークショップ」「移行期・繁殖」「飼養管理」「栄養・哺育育成」「乳質・蹄病」「環境」のセッションで構成され、以下の講演が行なわれた(敬称略)。
・「世界のカビ毒汚染状況」グアン・シュー(バイオミン・シンガポール、日本ニュートリション)
・「アミノ酸バランスを整える」平田明日香(エボニックジャパン)
・「移行期の乳牛管理:常識と非常識」大場真人(カナダ・アルバータ大学)
・「乳牛の繁殖成績の現状と課題」堂地修(酪農学園大学)
・「酪農家が自前で持っておきたい技術」濱田将臣(ボーバインベットサービス)
・「朝霧メイプルファームのチャレンジと成果」丸山純(朝霧メイプルファーム)
・「TMRセンターでの飼料設計の考え方―パネルディスカッション」石田聡一(雪印種苗)、林川和幸(上川農業改良普及センター士別支所)、安富一郎(ゆうべつ牛群管理サービス)、武中慎治
・「哺乳管理の足元を見つめなおす」黒崎尚敏(トータルハードメネージメントサービス)
・「レンサ球菌による慢性乳房炎に対するショート乾乳治療の効果」松井崇(ちばNOSAI)
・ワンランク上の削蹄方法の提案」安富一郎、片山正幸(カタヤマ)
・「ドイツに学ぶバイオガスプラントの課題」梅津一孝(帯広畜産大学)

食の安全セミナー開催

2013 年 10 月 26 日

Filed under: — Yayoi Uruno @ 5:00 AM セミナー報告,ニュース

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協同組合日本飼料工業会は、10月25日、都内で、食の安全セミナーを開催した。本セミナーでは、欧州飼料工業会事務局長のアレクサンダー・ドーリング氏により、「共通農業政策改革~欧州飼料工業会も対応~」が講演された。その後のパネルディスカッションでは、札幌大学経済学部教授の飯田隆雄氏が座長となり、学習院大学教授の荘林幹太郎氏、日本獣医生命科学大学名誉教授の木村信煕氏、東京大学教授の杉浦勝明氏、元デンマーク大使館農務官の土谷眞寿美氏、日本飼料工業会技術委員会委員長の伊藤博康氏、日本飼料工業会技術委員会副委員長の多田眞一氏により、今後の日本の飼料畜産業の持続的発展のための意見交換が行なわれた。そのなかで日本飼料工業会技術委員会副委員長の多田眞一氏は、国内消費者の理解と応援を得る取り組みの推進、食と農を支える若い世代の育成等を提言した。

伊藤忠・日本ニュートリション・バイオミン飼料畜産セミナー2013

2013 年 10 月 23 日

Filed under: — Yayoi Uruno @ 1:42 PM セミナー報告,ニュース

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伊藤忠・日本ニュートリション・バイオミン3社共催による飼料畜産セミナーが、10月22日、都内で開催され、全国から飼料業界関係者約350名が参加した。

今回は「日本の消費動向と今後の商品展開((有)トルティーノ代表取締役 中村徹氏)」、「飼料に添加される抗菌剤とヒト病原菌の薬剤耐性について(南オーストリア大学 メアリー・バートン教授)」、「TPP交渉の展望 2013年秋((株)食料マネージメントサポート 代表取締役社長 福田高志氏)」、「2013~2015年の農作物の需要と供給 そして2020年における構図は?(米John C.Baize and Associates ジョン・ベイズ社長)」、「世界の穀物類受給動向と日本の食糧輸入事情((株)食料マネージメントサポート 岩崎正典氏)」、以上五つの講演が行なわれた。ジョン・ベイズ氏の講演では、「アメリカにおけるトウモロコシのエタノール利用が成熟してきたので、今後エタノールへの利用はなくなり、トウモロコシは飼料用へまわる率が高くなる」と報告された。このほか、バイオミン社の紹介や、日本ニュートリション志布志工場の紹介も行なわれた。

自給飼料の増産

2013 年 10 月 21 日

Filed under: — Yayoi Uruno @ 11:59 PM セミナー報告,ニュース

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農林水産省および全国飼料増産協議会は、10月21日、都内で、飼料増産シンポジウムを開催した。「今こそ自給飼料の増産により生産コストを削減しよう」をテーマに、全国的な飼料増産運動の一環として、現地における生産コストの削減につながる飼料生産・利用技術の取り組みについての情勢報告、技術紹介、および総合討論が行なわれた。

 情報報告では、農林水産省生産局畜産部畜産振興課草地整備推進室長の岩波道生氏が、「自給飼料生産をめぐる情勢と増産に向けた取組」について講演した。また技術紹介では、ホクレン農業協同組合連合会飼料部主任技師の大塚博志氏が「雑草に打ち勝つ草地管理~北海道における植生改善の効果」を、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構草地研究所上席研究員の佐藤尚氏が「進化する飼料作物~飼料生産性向上のための優良品種導入と品種開発」を、北海道河西郡中札内村の酪農家である三浦祐希拓氏が「配合飼料ゼロ給与酪農への挑戦~サイレージの品質アップと集約放牧で達成した高収益経営」を、そして、長野県畜産試験場飼料環境部専門研究員の浅井貴之氏が「永年生牧草を補う高品質粗飼料の増産~消化性の高い草種を組み合わせた粗飼料増産体系」をテーマに、講演した。

 総合討論では、講演者達により、草地更新を進めるためのポイントや、優良品種の導入の推進について等、意見交換が行なわれた。酪農家の三浦祐希拓氏は、「草地更新の必要性が叫ばれていても、なかなか行動が進まないのは、草地に酪農家自らの足で入って、草の状態を見ていないからだと思う。実際に見て、本当の意味での牧草の良し悪しを知れば、草地更新をやらざるを得なくなる。農家を畑に連れていってくれるアドバイザーがいてくれたら、自分も、もう少し早く行動できたかもしれない」と、自らの経験をもとに意見を述べていた。

認知症とミルクの効用:メディアミルクセミナー開催

2013 年 10 月 9 日

Filed under: — Yayoi Uruno @ 10:45 AM セミナー報告,ニュース

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一般社団法人Jミルクは、10月8日、都内で、第34回メディアミルクセミナーを開催した。

今回は「急増する認知症の予防:食事の重要性とミルクの効用」と題して、九州大学大学院医学研究院の清原 裕教授が講師として招かれ、追跡調査による認知症の発生状況報告と牛乳・乳製品の摂取による改善効果に関する講演された。

追跡調査のモデル地区である福岡県久山町では、1961年から50年にもわたり生活習慣病の追跡調査が行なわれており、生活レベルが日本の典型的平均レベルで、偏りがほとんどない。この町での65歳以上の高齢者を対象に調査してきた結果、認知症、なかでも頻度が高くなっているアルツハイマー病(AD)の有病率は時代と共に年々増加傾向にあり、血管性認知症(VaD)は1998年まで減少傾向であったが、2005年に増加傾向に転じていることがわかった。

また60歳以上の高齢者対象の75g経口糖負荷試験によって判定した結果、糖尿病はADおよびVaDの共通した危険因子であり、とくにADとの関連が強い傾向にあり、その要因として国民レベル(2人に1人の割合)で糖尿病が増加していることが挙げられる。現在、日本全国の認知症高齢者は500万人を超えており、今後高齢社が増え続ける30年間で倍の1000万人以上の認知症高齢者が出現することになるだろうといわれている。一方栄養調査を60~79歳の高齢者の食事パターンが認知症に与える影響について検討したところ、牛乳・乳製品、大図製品や豆腐、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類の高摂取と、米の低摂取などの食事パターンが、ADおよびVaDを優位に低下させる結果となった。牛乳・乳製品はとくに有意で、摂取すればするほど発症率のリスクを低下させる傾向にあることがわかった。これには乳中のカルシウム、マグネシウムが大きく関係しているのではないかということであった。

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