「国境を越える食と農」:(財)農学会が公開シンポジウムを開く

2011 年 2 月 12 日

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2月12日(土)、東大農学部・弥生ホールで、(財)農学会が、
「国境を超える食と農」をテーマに講演会を開いた。

最初に、東大大学院の本間正義教授は、
農業者に求められる資質は医者に匹敵する、と述べたうえで、
日本の3大農業問題は、コメ、農地、農協、と指摘した。
TPPは農業だけでなく、環境、労働などのルールも含み、
将来的にはAPEC加盟国全体でのEPAを目指すものとの認識が大事で、
日本農業への影響は、
10年かけての調整だから構造変化が起きるとしたうえで、
地域の取り組みをプロモートする農政が重要と解説した。

全国農業協同組合中央会の馬場利彦農業対策部長は、
食料・資源は世界で争奪の時代に入っており、
関税がゼロになったら、加工原材料である品目は殆ど全滅するとし、
土地利用型農業(水田)における復権は、
担い手への土地の集積を図り、協同による地域資源の保全管理により
消費者・国民の信頼のうえに価値観を共有することが必要、などと述べた。

消費者側として、全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は、
消費者行政の推移を振り返ったうえで、農業・食品産業への期待として、
安全で、おいしくて、楽しくて、手ごろな値段の食べ物を、
安定的に、正直に、わかりやすく、寄り添って、提供して欲しいとする一方、
消費者も消費者力アップが課題、とした。

最後に「まとめ」として、東大大学院の生源寺眞一教授は、
農政は逆送・迷走しており、冷静で現実的な議論を積み重ねていくためにも
農業・農村の現実を直視することが肝要であり、
国際環境の変化に対応するには農業の競争力のレベルと、
そのために資する農政の組み立てがポイントとなる、などと話した。

参加者からは「農業のプロとして、貿易問題は消費者への説明が必要。
JAは現場意識が薄い(主婦)」、
「食の安全安心が担保されない限り、TPP参加を進めるべきではない(文筆業)」
などの意見が出された。(文責:DJ関東)

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