「メタン発酵処理を取り巻く現状と課題」 情報交換会(下)
2012 年 11 月 6 日
6日、既報「平成24年度家畜ふん尿処理利用研究会」の2日目の情報交換会が開かれた。テーマは「今、バイオガスプラントに必要なイノベーション」。
報告は実証事例として、栃木県畜産酪農研究センター:木下強氏の「栃木県におけるバイオガスプラント実証事業」、岡山県畜産研究所:白石誠氏の「岡山県畜産バイオマス利活用実証施設の稼働状況についての2例。いずれも試験場の畜舎からの家畜排せつ物を利用したもの。
さらに「地域振興のためのバイオマス事業」と題し、農研機構農村工学研究所の柚山義人氏が千葉県の事例を紹介しながら、バイオマス利用による地域活性化の効果などを報告した。
また、栗田工業株式会社の三崎岳郎氏が「企業から見たバイオガス事業の展開」と題して報告。バイオガスを、家畜ふん尿の処理・環境負荷の低減・環境保全を主体にするのか、エネルギー(メタン)創出事業を主体とするのかを明確にすることがバイオガスへの取り組みの前提となるとしたうえで、地域に合致した地産地消のバイオガス事業創出が大事などと語った。
講演後、総合討論が行われ、コメンテーターの畜産草地研究所の田中康男氏は「メタン細菌の集塊の安定性の高さを最大限に生かすことがポイント」などと話した。
取材メモ:
メタン発酵技術の研究と実証試験は昭和30年代から行われており、紆余曲折があったが、FIT制度がこの技術施設への追い風になろうとしている。しかし、多額の初期投資や消化液の活用方法などで、畜産現場とくに都府県では定着し難いのが現状だ。この施設の参入企業も30社余あったが、現在は数社だけ。メタン発酵を家畜ふん尿処理とするだけでは、現状の畜産環境では収支がきびしいと演者らは言う。発酵を高めるための地域の生ゴミ処理との連携および関連する法制度の見直し、再生エネルギーの位置づけなど、この技術の普及には多様な切り口と、かかわる人材の熱意が求められるだろう。(文責:関東支局)
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