「メタン発酵処理を取り巻く現状と課題」 情報交換会(上)

2012 年 11 月 5 日

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農研機構畜産草地研究所と中央農業研究センターは5日、同研究所で「平成24年度家畜ふん尿処理利用研究会」を開き、関係者ら約150名が集まった。これは、家畜ふん尿処理方法の一つとしてすでに実用化されているメタン発酵において、今後の発展方向、現実的な課題などを検討し合うもの。

基調講演1では「バイマスをめぐる現状と課題」と題し、農水省バイオマス推進室長の山田耕士氏が、バイオマス関連の政策目標・事業化戦略などを報告。東日本大震災の経験から、農山漁村資源を活用した分散型エネルギー供給体制の整備が課題としたうえで、事業化に向けた入口から出口までの一貫体系の戦略などを示し、サンエイ牧場(北海道)のバイオガス施設の事例を紹介した。

基調講演2では「農山漁村における再生可能エネルギー発電をめぐる情勢を畜産業」と題し、農水省畜産環境・経営安定対策室の金澤正尚氏が、再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT:2012年7月施行)などを話した。その発電事例として、酪農地帯における太陽光利用、家畜排せつ物利用のメタン発酵などを紹介し、それぞれメリットとデメリットを示した。同時に、排水処理など環境負荷を下げるための努力が引き続き必要などと述べた。

ホクレン農業総合研究所顧問の松田従三氏(元北大教授)は「バイオガス事業の今後の展開」と題して講演。「家畜ふん利用のバイオガス発電は発電時のCO2排出量が大きく削減されるほか、発電量が安定していることが特長。ふん尿の悪臭低下とともに、消化液の土地循環ができる。さらに消化液を固液分離し、固形分を敷料に使えるメリットが大きい」と述べ、北海道内の酪農場のバイオガス施設などを紹介した。そのうえで、償還年数から考えて、補助金がないと売電収入だけでは経済的に成立せず、生産物の総合的な利用によってのみ成立するとの試算を示し、最大の課題は送電線容量であり、将来的には熱利用も考えるべきと締め括った。

「士幌町におけるバイオガス事業の展開」と題し、北海道士幌町の高木康弘氏が町内の3基のバイオガス施設の取り組みを報告した。メリットは、ふん尿処理作業が大幅に軽減されること、悪臭が殆どなくなること、即効性の高い液肥化などをあげた。課題は建設費、修繕費などとし、今後はFITによる普及、バイオメタン、コージェネレーションなどに期待しているとした。新たな展開としてJAが事業者となり、さらに4基が稼働予定とのこと。

最後に「バイオマス発電とエネルギー化の最新研究動向」と題し、農研機構バイオマス研究統括コーデチィーターの薬師堂謙一氏が講演。バイオガス事業化戦略は、基本的に堆肥・液肥による肥料利用を前提としているとし、消化液が利用な可能な地域でのメタン発酵では生ゴミや食品残渣との混合処理が推進されると述べた。都府県では消化液の施用先として水稲の追肥利用などにも可能性があると示唆し、その施用事例などを報告した。また将来的に売電価格が下がることを計画に織り込むべきとした。さらに、畜草研が開発した吸引通気方式でのふん尿資源の現場利用例などを示した。

講演後、総合討論が行われた。(文責:関東支局)

関連増刊号:「もっと知りたい環境対策」Dairy Japan 2010年10月

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