快適なフリーストールと穏やかな牛

千葉県のK牧場は昨年、念願のフリーストール牛舎を新築しました。

以前からフリー飼養構想を描いていたKさんは、主に県外のフリーストール農場を視察して見識を高め、牛にとって快適なフリーストールは何かを模索していました。

写真はそのK牧場のフリーストールでの一枚。牛達がゆったりと横臥・反芻しています。

取材中、内部の様子を撮影しようとフリーストール内部に入った部外者の私に対しても、牛達はあまり警戒心を抱く様子がないことが印象的でした。いわゆる「逃避距離が短い」という表現がぴったりとくるK牧場。その秘訣は穏やかな気質の牛群作り(改良)と、牛を急かさない管理、牛に無理をさせない管理に集約されると言います。

快適な環境でゆったりと横臥する牛達を見ると、日頃の管理が眼に浮かぶようです。

そんなK牧場の詳細な様子は12月号「オン・ファーム」で紹介します。

自給飼料の有効活用と付加価値創造

神奈川県のK牧場では、ホルスタインのほか、ジャージー種の乳牛を8頭管理しています。

圃場面積の少ないK牧場では、自給飼料の通年給与はままなりません。しかし、堆肥処理などのため自給飼料生産は続けなくてはならない。そのため、ジャージー種を自給飼料の有効活用のために導入したと言います。また、ジャージー種には受精卵の借り腹としての利用価値も見出しています。

Kさんは、「基本はホルスタイン。プライドのためにも、ホルスタインで改良を進め、乳を搾ることがあくまでも主流」としつつ、今後は地元農協で販売するソフトクリームの原料乳として、ジャージー生乳を使い、その付加価値を高めることを計画しています。

規模拡大が難しい都市近郊酪農で、経営体力を強化し、収益性を高めるためのチャレンジは続きます。

農家はかっこよく

取材で兵庫県のH牧場をお邪魔しました。

できたばかりの事務所に通されて、その明るくおしゃれなデザインとインテリアコーディネートに驚きと心地良さを感じました。

「格好良い事務所になりましたね」と声を掛けると、「農家は格好良くないといけないからね」とI社長。ところどころに置かれる日用品も、おしゃれなものばかり。

牧場には関係者をはじめ、さまざまな来客があると思います。なかには一般消費者が見学に訪れたり、車を止めて牛や牛舎を眺めることもあるでしょう。そんなとき、「格好良い」「きれい」な牧場は酪農全体のイメージアップに貢献しますね。もちろん、牧場で働く従業員の皆さんも、そんな環境で働くことができれば、モチベーションアップにつながるでしょう。

かくいう私も消費者の一人。H牧場の格好良くてきれいな牧場を見て、ますます酪農のファンになりました。

 

酪農はやっぱり素晴らしい産業

SNSの一部で牛乳や酪農へのアンチ論を拡散する向きが見られ、その心無い発言に本ブログの読者の方々にも不愉快な思いをされている方がいらっしゃると思います。

そこで、改めて酪農や牛乳の素晴らしさ、そして産業としての意義などをJミルクに伺いました。
これは、今一度自分達の生産物、自分達の仕事を振り返り、アンチ論に負けない気持ちを取り戻そうとして行なった取材です。

JミルクのHPには、「牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!」というWebコンテンツがあります。ここには牛乳乳製品に対する誤った知識を、科学的な根拠に沿って正しい知識へ導こうと24の「気になる噂」への解説があります。一度、このコンテンツに目を通してみてください。「気になる噂」をスッキリと解説しています。

なかには「牛乳の蛋白質は異種蛋白なのでアレルギーを引き起こす?」という噂もあります。冷静になって考えれば、人間を始めほとんどの動物や乳を除いて同種蛋白を摂ることがないことがわかると思います。そして、どのようにして異種の動物性蛋白質を摂るか、その方法の一つとして乳があるのだと思います。

乳牛は牧草などの人間には消化・利用できないもの、食品を製造した際に出される不可食部位などを有効に利用して、栄養バランスに優れ、かつ栄養単価に優れた乳を生産してくれます。また多くの国で乳は大切な蛋白源として、国内で自給すべくその生産と供給体制を築いています。今後の世界の人口の増加や他国の経済状況、そして国際的な牛乳乳製品の需給状況によっては、将来的に乳製品を「買いたくても国外から輸入できない」ということもありえない話ではありません。だからこそ、国内の酪農の生産基盤はしっかりと確保していかなければならないのだと思います。

あと一口

安定生産をテーマに取材で熊本県のT牧場を訪ねました。
今回伺った農場での「安定生産」は、年間を通じて繁殖のばらつきが少なく、そのため搾乳牛頭数の変化が少ないバランスの取れた生産です。そのうえで検定成績1万2000kgを搾る優良経営で、牛舎を見ても、Tさんの話を聞いても興味深い取材でした。

ちょうど取材日は九州で梅雨明けをした日で、標高の高い阿蘇でも厳しい暑さを感じる天候でした。
「安定した繁殖のために必要なことは?」の問いに、Tさんは「もう一口をしっかり食べてもらうこと」と話します。

現代の乳牛は泌乳能力が高く、分娩後の乳量も急速に立ち上がります。その泌乳、そして子宮をはじめとした乳牛の体自体の回復をきちんとカバーしたうえで繁殖へのエネルギーが回るという考えです。
さまざまな視点で酪農家さんの取材をしますが、ほとんどの取材で今回と同じ「もう一口を食べてもらうこと」に行き着きます。そして「もう一口を食べてもらうため」に、カウコンフォートやバンクマネージメントへの注力が焦点になります。

酪農には「これだけすれば劇的に良くなる」という魔法のような技術はないように感じます。牛にとって快適な環境を提供し、食べたくなるエサを、食べたくなるように与える、それをいつもでも同じように提供することに尽きるのではないでしょうか。

私は「その一口」を食べないように気をつけなければならない体型です。「もう一口」を食べられる乳牛が羨ましいなと感じる取材でした。