ミニTPPといわれる「韓米FTA」の実態を解説
2012 年 5 月 25 日
北海道地域農業研究所(藤田久雄理事長)は25日、札幌市内で、「韓米FTAと韓国農業の将来」と題した通常総会特別講演を行なった。
講師は、韓国江原大学農業資源経済学科の李炳旿(イ・ビョンオ)教授。
同教授は、韓国におけるFTA(自由貿易協定)推進の現状、韓米FTAの農産物の交渉結果、農業への影響、政府の対応と将来の展望などを解説した。
韓国は2002年10月にチリと初めてFTA締結し、その後9年半の間に47カ国とFTA締結、うち46カ国と発効している。
そのうちの一つ、韓米FTAは2006年に交渉開始、2007年に妥結されたが、農家の強い反発もあって5年後の今年3月に発効した。
韓米FTAの農産物の交渉結果は、米国は農業大国であり、あらゆる品目を持っていることから、他国のFATと異なり品目ごとに開放の内容が非常に細かくなっている。
対象になる1531品目のうち、関税撤廃から除外されたものはコメおよびコメ関連製品16品目(1%)のみ。
韓国農業への影響は、畜産と果樹の被害が大きく、牛肉、豚肉、鶏肉、りんご、ぶどう、柑橘、乳製品の順に被害が大きい。
畜産物においては、牛肉は15年、豚肉は10年以内に関税を撤廃し、この期間中にAGS(関税の減縮によって輸入が一定の水準以上に急増した場合、関税を上げて国内市場を保護する措置)を適用する。
鶏肉は10から12年以内に関税を撤廃する。
脱脂粉乳、全脂粉乳、練乳は現在の関税を維持して(176%)5000tのTRQ(無関税または低率関税で輸入されるクォータ数量。これらの品目については無期限に毎年3%ずつ複利で増量する)を提供する。
混合粉ミルク、調剤粉ミルク、チェダーチーズ、バターは10年以内に関税を撤廃する。
FTAによる農業への影響に対する対応として政府は、長期対策として、品目別の競争力強化、農業の体質改善(農業者の能力強化など)、短期対策として、被害補償直接支払、廃業支援などを行なってきたが、影響が今までに以上に大きい韓米FTAに対応する農業支援対策として新たな対策を加えた。
それは、畜舎施設の近代化、粗飼料生産基盤の拡充、糞尿処理施設、飼料産業の総合支援、種畜施設の近代化、刹処分補償金などで、畜産部門の競争力強化のための支援対策が多く盛り込まれている。
同教授は「韓国農業の将来予測は、ネガティブ要素もポジティブ要素もあることからむずかしい」としながらも、「製品などの差別努力によって輸入品との代替を抑制し、被害を最小にすることが重要である。複雑な韓米FTA内容を詳しく分析し、韓国農業にとって得になるように今後、工夫していくことが大切である」と語った。
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