飼料用米の利活用でシンポ:放射性物質汚染にも触れる

2012 年 3 月 14 日

Filed under: — admin @ 5:17 PM セミナー報告,ニュース

3月14日、全国飼料増産協議会と日本草地畜産種子協会は都内で、平成23年度飼料用米シンポジウムを開いた。参加者は行政、消費者団体、企業などから約120名。

今回は、飼料用米の利活用の事例紹介とともに、放射性物質の汚染問題もテーマにとりあげ、農水省草地整備推進室の小倉室長は、来賓挨拶で「飼料中の放射性物質許容値を策定したが、平成23年産の牧草の処分が課題。宿題として取り組んでいく」などと述べた。

同省は、飼料用米の作付けを平成23年度の3万4000ヘクタール(18万トン)から、同32年度には8万8000ヘクタール(70万トン)に増産することを目標にしている。このため、実需者ニーズに対応した安定供給体制の構築、多収米品種・栽培技術の普及、生産コストの低減などを課題とし、産地と畜産農家、飼料メーカーとのマッチング、乾燥調製・貯留施設の整備などを基本計画にかかげている。

講演は「飼料用米をめぐる情勢と原発事故への対応について」(農水省畜産振興課:小宮英稔氏)、「放射性物質汚染後に食品安全のために取り組んだこと」(日本生活協同組合連合会:内堀伸健氏)が、それぞれ農産物と放射性物質検査の現状などを話した。

飼料用米については、3つの事例が報告された。
1:多収穫栽培と品種混入問題を解決し、耕畜連携を進める取り組み(岩手県:八幡平農業改良普及センター):平成20年からエサ米研究会を設立し、各種事業を行なってきた。県内では飼料用米1800ヘクタール、稲WCS700ヘクタールを利用した豚肉、牛肉、卵の生産・販売が行なわれている。今後の課題は、収量向上、コスト低減、保管場所の確保、などとした。

2:豚のエサからソーセージまで 自給へのこだわり(岐阜県:菖蒲谷牧場):飼料米を通じて地域との関わりが生まれ、つながりが増えた。豚の発育が促進され、脂部分がきれいな白色になる、また融点が低くなる。ハム、ソーセージなどの製造を手がけ、JA直売所や各種イベントなどで販売している。将来展望は、地域密着型の養豚経営をめざす、などと述べた。

3:飼料用米利用畜産物の普及拡大への取り組み(北海道:コープさっぽろ):卵、牛肉、豚肉、牛乳などの生産者に飼料用米を使ってもらっている。例えば、飼料米を給与した「黄金そだち」シリーズの「別海牛乳」は、穀物飼料の約10%を飼料米にしている。同牛乳は、宅配で週7000本、店舗で週2500本という売れ行き。飼料用米利用畜産物の販売比率では牛乳乳製品は約16%となっている。今後は米粉に挑戦する、とした。(文責:関東支局)

TPP交渉参加断固反対をシンポジウムで決意

2012 年 3 月 13 日

Filed under: — maetomo @ 3:55 PM ニュース

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 全中は3月13日、都内でTPP交渉参加断固阻止全国要請集会を開催し、事前協議が進められているTPP交渉参加について断固阻止する決意を新たにした。
 集会では、東京大学大学院・鈴木宣弘教授が座長を務めて、民主(櫻井充・政策調査会会長代理)・自民(加藤紘一・総合農政貿易調査会会長)・公明(石田祝稔・政務調査会副会長)共産(紙智子・農林漁民局局長)・社民(吉泉秀男・農林水産部会部会長)の与野党議員とTPPに関する討論会を開催。与野党が一致してTPP交渉参加を断固阻止するよう求めた。このなかで、共産・社民の両党が党としてTPP反対を明確にしていること、自民党も「聖域なし関税撤廃ならTPP交渉参加は反対」と明確にしていることなどを確認した。与党・民主党は党としての結論はまとまらないものの、野田政権に対して「TPP交渉参加に向けて慎重に協議するよう要請している」などと発言した。
 討論ではTPPの本質について各議員らが話し合ったが、「明確なメリットがない」としてほぼ一致した。またTPP交渉参加の可否についての議論は「農業対輸出産業ではなく、国内法や規制をすべてなくすものであることが明らかになってきた」として広く国民の利益になりえないことを確認した。
 集会は参加者全員が「TPP交渉参加断固阻止に向けて頑張ろう」と拳を突き上げ、ガンバロー三唱で締め括った。

二つのテーマ(環境規制、放射性物質)で畜産講演:茨城県で開かれる

2012 年 3 月 9 日

Filed under: — admin @ 9:12 PM セミナー報告,ニュース

3月9日、茨城県筑西市内で、同市畜産振興協議会、家畜改良センター茨城牧場ら主催で「畜産セミナー:原発事故への技術的対応」が開かれた。約50名が参加した。

講演では、畜産をめぐる情勢について、農水省関東農政局の畜産環境対策官の蛯名広志氏が、次のように述べた。

1:飼料中の放射性セシウム許容値が4月1日から1kg当たり100ベクレルになる。敷料として稲わらを使う場合もこの数値は不変なので要注意。食品の安全・安心を担保するための事項としてとらえて欲しい。これは牛の口に入る段階まで守って欲しい数値だ(堆肥中の規制値400ベクレルは変わらない)。
2:水質汚濁防止法が、平成25年(来年)に畜産排水中の硝酸性窒素等の暫定基準値900mg/lが見直されることが予想されるので、その準備をして欲しい。環境省は良く整備された農場の数値をもっており、それが適用されると、多くの農場では厳しくなる。だから、畜産現場もデータを揃えておく必要がある。
3:環境負荷軽減、家畜排泄物の利活用による産地活性化、スーパーL資金の金利負担軽減措置などの施策があるので、関係機関に相談して欲しい。

また、畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域長の塩谷繁氏は、原発事故による技術的対応を、放射性物質の基本から、その除染技術まで詳しく解説した。

1:セシウム134の物理的半減期は約2年、同137は約30年。初期にコントロールすることが大事だ。
2:セシウムの植物への移行は、葉面吸収と経根吸収があり、今後は経根吸収が中心になる。移行率は、チェルノブイリ事故の例では、経年的に減少し、3年間で3分の1から8分の1程度に減少する。
3:家畜がエサを経て牛に移行する率はセシウムの形態や摂取方法、家畜の種類や月齢などで変わる。
4:最も効果的なセシウム対策は、土壌のプラウ耕だ。研究データでは、プラウ耕+ロータリー耕で土壌中の濃度が元の約5%まで低減している(詳しくは、畜草研のHPに掲載)。
5:酸性やアルカリ性の土壌では吸着力が弱まるので、酸性土壌では石灰を施用し、PHを6.5程度に中和する。さらにカリウムの少ない土壌では、カリウムの施肥により、植物へのセシウム吸収が抑制される。
6:徐々に汚染の状況が分かってきた。各種の方法を組み合わせることで、汚染低減が予測できるようになりつつある。冷静に実態を把握し、これまで続けてきた高品質な自給飼料生産にかける志を絶やさないで欲しい。

参加者からは、「今後の研究に期待する」などの声が寄せられた。(文責:関東支局)

堆肥の連年施用で飼料用トウモロコシの放射性セシウム移行を抑制:畜草研が発表

2012 年 3 月 7 日

Filed under: — admin @ 9:36 PM ニュース

畜産草地研究所は、3月7日、以下の内容の研究成果をリリースした。

平成23年産の飼料用トウモロコシの放射性セシウム濃度は、モニタリング調査において大部分(99%)が1キロ当たり100ベクレルより低く(平成23年12月時点)、永年牧草よりも低い傾向を示した。「飼料用トウモロコシは、土壌からの放射性セシウムの移行が少ない作物」といえる。

1:堆肥を施用しないこと等により土壌のカリ肥沃度が低くなると、飼料用トウモロコシへの放射性セシウムの吸収・移行が大きくなる。

2:飼料用トウモロコシ栽培において、堆肥(副資材としてオガクズ、モミガラを含む牛ふん堆肥)を1作当たり・10アール当たり3トン程度連年施用すると、堆肥を施用しない場合に比べて、土壌から作物体への放射性セシウムの移行を抑制する効果がある。

3:土壌のカリ肥沃度が低い圃場では、K2O換算でカリ肥料を標準的な量である、10アール当たり20kg程度施用することも有効。ただし、それ以上の施肥をしても低減効果は期待できない。

詳しくは、畜産草地研究所へ。http://nilgs.naro.affrc.go.jp

食・スポーツ・歴史・魅力のまちづくりへ:雪メグ

Filed under: — admin @ 6:28 PM ニュース

雪印メグミルク(株)(代表取締役社長:中野吉晴氏)は3月7日札幌で、札幌市との「さっぽろまちづくりパートナー協定」の調印式を行なった。
これにより、同社は札幌で生まれた企業として、札幌市とそれぞれが有する資源を有効に活用し、産官相互の連携と協力を基盤に、市民が主役のまちづくりに取り組むパートナーになることとなった。

本協定に関する主な取り組み:
1) 食の大切さと尊さを伝えるまちづくり
2) 四季の変化を感じた、スポーツを通じたまちづくり
3) 歴史を重んじた地域連携のまちづくり
4) さっぽろの魅力を伝えるまちづくり

以上の四つの分野を連携の柱とし、「健やかな子どもの成長のためのまちづくり」を中心に同社グループ全体で取り組みを進め、貢献していきたいとした。

中酪 24年度事業で放射性物質問題対策

Filed under: — maetomo @ 5:43 PM ニュース

社団法人 中央酪農会議は3月7日、理事会と第50回通常総会を開催し、平成24年度事業計画などを決めた。中酪は24年度、「国産生乳需要定着化事業」の一つの柱として「放射能問題対策」を実施し、現在各地域で行なわれている給与飼料を中心とした飼養管理改善などの取り組みに対する支援策として2億5000万円の予算を計上した。

具体的な支援内容について現段階で決まっていないが、代替飼料の購入費や特定地域における牛乳の風評被害などが放射性物質に関わる問題としてあがっている。また、この対策には消費者に向けた国産牛乳乳製品の安心感の醸成を目的とした広報活動や各地の課題や取り組みの共有化を図るための「原発事故対応に係る連絡会」の設置も含まれる。

このほか、総会では牛乳消費喚起対策事業の推進として、24年度に最終年を迎える「MILK JAPAN」運動の推進を決めた。これまで関東地域でのみ放送されていたテレビ番組「ミルクチャポン」を全国放送するなどして、認知度の向上と消費に結びつける。中酪は、全国放送することで、「MILK JAPAN」と他の食品企業とのコラボレーションが進むことも期待されるとしている。全国放送はBSの放送網を利用することで、放送コストを節減する考え(関東地域では地上波従来枠とBS枠)。

千葉県内のフェルミエ(牧場産)チーズを披露:手づくり乳製品研究会

2012 年 3 月 3 日

Filed under: — admin @ 6:43 PM ニュース,業界情報

3月3日(土)、千葉市内で同県「手づくり乳製品勉強会」が、県内にあるフェルミエチーズを披露し、展示・即売を行なった。共催は県畜産会。参加者は、フェイスブックなどで開催を知ったという方々約130名。

同会は、現況の中で酪農の可能性を探そうと平成22年に開いた「手づくりチーズを作る研究会」が発端となり、ほぼ毎月、チーズづくりの勉強、試作、互評を重ねてきた。

今回のフェスタでは、知久牧場(野田市)、関牧場:よじょえもんのチーズ工房(いすみ市)、TAKAHIDE牧場(同)、フェルミエフロマージュ・コマガタ(同)、太田和牧場:めえしばミルク工房(鴨川市)、近藤牧場(南房総市)の6農場。(里山放牧方式でジャージー牛を飼いチーズを製造しているチーズ工房IKAGAWAは欠席)。
それぞれがモッツアレラチーズなど、主にフレッシュタイプのチーズを披露した。また、ワインの試飲も行なわれた。

各工房とも、今後も研鑽を積み「カマンベールチーズをつくりたい」「生産量の拡大を検討中」「牧場レストランを構想中」などとしており、勉強会が発足して2年という短い時間で、大きな一歩を踏み出した。

集いの中で、県畜産総合研究センター企画経営室の西山厚志氏が「千葉県内における6次産業化条件の検討」と題し、県内消費者へのアンケート調査による価格感度をプレゼンテーションし、消費者が適正と思うナチュラルチーズ価格と製造側の希望価格には差があり、それを何らかの方法で埋めることが必要で、例えば「独特な美味しさ」「牧歌的な雰囲気」「遊びに行った際に寄れるアクセス」かもしれないなどと示唆した。(文責:関東支局)

農地からの放射性物質の「除染技術手引き」を公表:農水省

2012 年 3 月 2 日

Filed under: — admin @ 8:23 PM ニュース

農水省は、3月2日、放射性物質に対する「除染手引き(技術)」をまとめ、公表した。この手引きでは、以下の技術について、事前の作業、具体的な除染作業の手順、準備する用具や機器、留意事項等を説明している。

 1:基本的な表土削り取り
 2:固化剤を用いた削り取り
 3:牧草地等での表土剥ぎ取り
 4:水による土壌攪拌・除去
 5:反転耕

また巻末に、放射性物質による汚染濃度が低レベルな場合に効果的な反転耕を実施する際の機器の選定や留意事項について解説を行うとともに、空間線量率から土壌の放射性セシウム濃度を推計する際の参考として、土壌の放射性セシウム濃度と空間線量率の関係について解説している。

しかし、反転耕が有効とされても、畑には傾斜や火山石などがあり、実際はこの通りにいかないのも現実で、多くの現場では対応に苦慮している。(文責:関東支局)
なお、同手引きは農水省ニュースリリースからダウンロードできる。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/120302.htm

酪農乳業の諸課題の解決に向けてj-milkが新事業を開始

2012 年 3 月 1 日

Filed under: — maetomo @ 8:30 PM ニュース

  (社)日本酪農乳業協会(j-milk)は3月1日、設立以来初となる臨時総会を開催した。昨年、雪印メグミルク?の高野瀬忠明特別相談役を会長に迎え、新たな組織への改革を急ピッチで進めるj-milk。臨時総会では24年度事業について議論、承認された。これらの事業の中には、昨年来j-milk内に設置された「酪農乳業課題検討委員会」から議論のテーブルに載せられた課題への対応などが盛り込まれた。 (more…)

第44回宇都宮賞 枳殻氏(根室)、佐藤氏(猿払)が受賞

Filed under: — djito @ 4:27 PM ニュース

(財)宇都宮仙太郎翁顕彰会(理事長・黒澤信次郎氏)は3月1日、札幌市で「第44回宇都宮賞表彰式」を開催し、100人を超える関係者らが参加した。
本賞は、北海道酪農の父である宇都宮仙太郎翁の業績を顕彰するとともに、継承されることを念願し、北海道酪農の振興に大きく貢献した人を毎年表彰するもの。
今回の受賞者およびその功績は以下のとおり。

【酪農指導の部】=枳殻勝久氏(根室市)
昭和51年に根室農協理事に選任されて以来、組合長、会長として卓越した指導力により、農協の健全な運営と地域農業の振興に貢献。
また、ホクレン代表理事副会長、日本酪農乳業協会副会長、ジェネティクス北海道副理事長、北海道酪農畜産協会会長など、多くの要職に就き、北海道のみならず全国の酪農畜産経営の安定向上や生産振興に貢献してきた。

【酪農経営の部】=佐藤裕司氏(猿払村)
昭和46年に後継者として酪農に従事して以来、地域ぐるみで乳牛改良に取り組み、共進会が後継者の育成の場との信念から、その活動支援に尽力。
また、経営の基本は最大の泌乳を引き出す牛作りであるとの認識のもと、きめ細かい飼養管理を実践し、生産効率の向上とともに収益性の高い酪農経営を実践努力している。

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