お金をかけるべきところはどこ?


飼料コストの高止まりによって、酪農経営は厳しい局面を迎えています。そんなとき、コストダウンはもちろん大事ですが、中期的に経営基盤を強化する投資も同時に考えたいもの。
そこで先日、本誌でおなじみの広島大学・杉野利久先生らと経営改善をテーマに座談会を開きました。
都府県では、導入牛によって乳牛を更新し、F1やET産仔で現金収入を得る経営も見られます。しかし、子牛と初妊牛の価格バランスは以前とは異なり、今ではそうしたモデルでは導入が厳しく、更新が進まないケースも。
そこで、投資すべき部分として杉野先生は自家育成と長命連産をあげました。
もちろん、導入主体の経営をいきなり自家育成型に切り替えるのは、初期の施設・設備投資、そして資金の回転の変化からリスキーなもの。段階的に自家での育成割合を増やすという前提。
そのうえで杉野先生は、育成頭数を少なくすることも大切だと言います。
具体的には、飼養管理技術の向上によって、平均産次を伸ばすこと、そして哺育・育成管理を向上させて初産分娩月齢を適正化させること(多くは短縮の方向へ)。
初産分娩月齢を適正化させるには、闇雲に初回授精を早めるのではなく、ターゲット・グロースに基づいて哺育・育成管理を見直すことがポイントと加えます。
平均産次を伸ばし、育成期間を適正化させ、性選別精液などをうまく活用することで必要な育成頭数を絞り込めれば、F1やETによって個体販売の売り上げをあげることも可能です。つまり、自家産後継牛で更新を確保しつつ、現金収入を得るというもの。
経営がひっ迫しているときこそ、さまざまなことを見直すチャンス。ぜひ、ご自身の経営も一度見つめ直してみてはいかがでしょう?

※ターゲット・グロースについては、本誌臨時増刊号『Dairy PREOFESSIONAL VOL/12』の特集Part3に詳しい解説がありますので、ぜひご一読ください。

散水で環境温度を下げる

最近は雨続きで低かった気温も、久々の晴れでぐんぐん上昇。最高気温は久しぶりに30度に届きそうな東京です。
日々の寒暖差は乳牛にとって大きなストレスですね。
さて、写真は先日訪れたK牧場での一コマ。散水を制御する装置を写したものです。
暑熱期に屋根散水をする事例を目にすることがあります。屋根散水は熱せられた屋根に水を掛けることで、その水が気化するときに熱を奪うことによって、牛舎を冷やす効果を狙ったもの。適切な使用では、牛舎内の湿度を上げることなく環境温度を下げることが期待できるものです。
K牧場は、この散水システムを牛舎の屋根以外にも、牛舎周辺のコンクリート部分や道路(許可を得て)にも設置しています。牛舎の周辺で蓄熱しやすい部分を冷やすことで、牛舎内温度はさらに下げることができるのだとか。
秋の足音が聞こえはじめる時期ですが、毎年夏はやってきます。暑熱対策の参考にされてみてはいかがでしょう?

バックアップは大事

先週から続いた西日本を中心とした豪雨で被害にあわれた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

私も18日から19日まで西日本のほうへ自動車で出張に行き、ところどころで激しい雨にあい、慣れているはずの運転が怖くなるほどでした。

さて、写真は以前伺ったある酪農家の処理室です。同型のバルククーラーが2台並んでいる様子がわかります。この酪農家ではバルククーラーのほか、真空ポンプなどひと通りの設備は予備を備えています。「万が一」のためのバックアップといったところでしょうか?

機械は使用時間の有無にかかわらず、いつどんなトラブルがあるのかわからない側面もあります。そして、すぐに修理できるかもわからないものです。しかし、酪農を営むうえで必要不可欠なもの。その考えが、搾乳機材一式のバックアップにつながったようです。

今回のスタッフブログにこのテーマを選んだのは、ある反省からです。

昨日の取材で私は、ノートパソコンでメモを取りながらお相手の話を伺っていました。今まで、それでトラブルなく過ごしてきたので「今回も大丈夫だろう」とたかを括っていました。ところが、帰宅後にメモを確認していると、素読みの最中にメモデータが消えるという大きなトラブルが。復旧もできず、右往左往する私。メモをとった後、きちんとバックアップしていれば、と後悔しました。これが今回のテーマ選定の経緯です。

皆さんもどうぞ、大切なデータはバックアップを。

TMR調製を安全かつ効率的に


いろいろな意見がありますが、東京オリンピックは無事開催され、アスリート達の活躍に感動が絶えない日々が続いています。
そんななか、日本勢の勢いは暗くなりがちな情勢に明るい光を届けてくれる、そんな想いでモニターに向かう毎日です。
さて、先日、岡山県のN牧場を訪れました。
N牧場は自給粗飼料と発酵セミコンプリートをメインとしたTMRを調製・給与し、飼料のコストダウンを図っています。
写真はN牧場の飼料調製庫の様子。飼料調製庫は2階建てとし、1階には定置型TMRミキサーを設置。2階から原料を投入しています。
この方式であれば、重機を使うことなくTMRを調製することが可能で、安全性と作業効率を上げることができます。
もちろん、TMRミキサーへの転落を防ぐため、投入口には転落防止用の格子を設置。
そんなN牧場の飼料効率向上への取り組みはDairy Japan9月号で。

牛の消化管ツアー

現在編集部ではDairy Japan9月臨時増刊号「Dairy PROFESSIONAL VOL.21」の進行をしています。

今回のテーマは「乳牛の消化と吸収」です。本テーマは主にルーメンから大腸まででの栄養の消化・吸収のメカニズム、起こりうるトラブルとその対応をなどをまとめたものです。

牛の口から大腸、肛門までは一本の管がコンパクトにまとめられもので、いわば「内なる外」といえるものです。そして牛では、腸だけでその全長は40mにも及ぶのだとか。

牛の消化と吸収を知ることは、飼料効率の改善はもとより、乳牛を健康に管理し、高泌乳を狙ううえでも大切なこと。ぜひご一読いただきたいと思います。

Dairy PROFESSIONAL VOL.21は8月下旬に発行します。ぜひお楽しみに!