周産期管理を省力・効率化

先日、久しぶりに広島大学を訪ねました。テーマは周産期の管理。
乳牛栄養学が専門の同大・杉野教授に周産期の栄養管理について、そして同大での実際の管理についてお話を聞きました。
まず大前提として、「乾乳前に肥らせないこと」と杉野教授。BCS3.25を目安にしているとのこと。さらに「乾乳期間を極端に短縮すると、次産時の乳量に影響する」として、同大では乾乳期間を45日以上設けるようにしているとも。
さて、乾乳期の飼料管理。同大学は農水省の競争的資金で広島大学を中心としたコンソーシアムと全酪連で開発したドライコンプリートのみ。これを現物で14kg/日給与するだけだと言います。乾乳は一群管理で、クロースアップにあたる期間は分娩後7から10日のルーメン馴致期間なのだと教えてくれました。
ドライコンプリートの給与によって、技術職員さんの作業負担が大きく減ったこともポイント。
今回のルポでは、農場での管理の紹介に合わせて、杉野教授に周産期管理のポイントについて、日頃耳にする疑問に答える形で収録させていただくことになりました。
鋭意編集中のDairy Japan4月号の発刊をぜひ、お待ちください。

安全な作業のために

農水省が公表した農作業死傷事故の統計によると、過去10年間に北海道で発生した農作業死傷事故の36%が家畜との接触で、とくに大型家畜を扱う作業者は注意が必要と記されています、また、フリーストール牛舎では、牛を移動させる際に柵などに挟まれる事故が多く発生していると注意を呼びかけています。
そんななか先日、香川県のM牧場の取材で聞いた作業安全のための取り組みは、まさに前述した事故による負傷を防ぐもの。
牛舎作業では乗馬用のプロテクターの着用で、挟まれ事故による負傷リスクを軽減しているそう。また、搾乳時にはヘルメット着用を義務付け、身の安全を守っていると言います。
「費用はかかるが、スタッフの安全には代えられない」 というMさんの言葉が響きました。
皆さんは、どのように作業の安全を管理していますか?

新年、あけましておめでとうございます。

昨年は酪農にとって、とても厳しい年でした。思い返せば、飼料費の高騰によって弊誌でも自給飼料系の情報を例年よりも多く提供させていただいた一年でした。自給飼料の増産は短期に解決できる問題ではありませんが、海外からの粗飼料や穀類の輸入依存度を少しでも減らすことは、酪農の底力を引き上げることになると再確認することにもつながったのではないでしょうか?

「明けない夜はない」とはよく使われる言葉ですが、わが国酪農もこの苦境から明ける時期が必ずやってくると信じています。そのために、本年も皆様に有用な情報を提供させていただこう――年末に改めて考えた2023年の抱負です。まだまだ厳しい状況が続きますが、酪農業界が前に向かって進めるよう願ってやみません。

冬場の哺乳に

先日、鳥取県のNファームにお邪魔しました。
寒い時期における哺育管理についてお聞きしたのですが、あいにく当日は長袖Tシャツ1枚で過ごせる暖かさ。そこで、Nさんに寒い時期の哺乳ボトルの管理を写真で送っていただきました(写真はNさん提供)。
適温で調乳しても哺乳時にはミルクが冷めてしまうーーそんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。
Nさんは写真のようにお湯を張ったバケツに哺乳ボトルを入れ、ミルクの温度低下を防いでいます。お金がかからず、かつ簡単な方法。
ぜひご参考に。

やっぱりリアルがいい!

11月16日、酪青研主催の第73回日本酪農研究会の会場にお邪魔しました。日本酪農研究会は昨年、札幌でハイブリッド開催されましたのに続き、今年は仙台で約190名の盟友が現地に集まりました。会場にお邪魔すると、酪農家さんや事務局、関係企業の皆さんなど久しぶりに対面で会って、お話することができました。
酪農を取り巻く情勢は飼料やエネルギーコストを始め、ほぼすべてのコストが上がり、経営を圧迫していることは周知のとおりです。現地に着くまで、「この状況でどれだけの酪農家さんが会場に集まるのだろう?」「皆さん、どのような面持ち、心境で参加されるのだろう?」と若干の不安を感じていました。しかし、いざ当日になれば、会場に集った酪農家の皆さんは真摯に発表に聞き入ったり、笑顔にあふれて久しぶりの再会を懐かしんだり、近況を報告し合ったりと以前と変わらぬ、いやいつも以上に明るい雰囲気であったように感じました。
幾人かの酪農家さんとも情報交換をしました。もちろん、経営が厳しいという声を多く聞きましたし、普段声に出せない不安な胸の内を話してくれる方もいました。それでも、「外に出て、全国の仲間と語り合う機会が持てたことは、モチベーションを上げることにつながった」といったようなこともまた、多く聞きました。
今年に入り、セミナーや勉強会などは「3年ぶり」と冠をつけてリアル開催やオンラインとのハイブリッド開催で行なわれることが多くなったように感じます。今回お邪魔して感じたことは、厳しいときだからこそ、リアルでつながれる仲間がいることが心の支えになり、明日からの営農のモチベーションアップにつながるということ。かくいう私も、久しぶりに皆様にお会いできて、元気と活力をいただきました。