静かな搾乳

昨日は弊社社員研修で、静岡県の朝霧メイプルファームさんにお邪魔しました。

農場運営の方法、施設・設備に至るまで、細かく紹介していただきましたが、そのなかで改めて感じたことが、搾乳時の様子がとても静かであること(http://dairyjapan.com/stuff/?p=4319)。

書籍「こうすれば農場はもっとうまく回る」で、同農場の丸山純さんは「声を出さないことをルール化」として「パーラー内ではいかなる音も発しない。パーラー内で牛が止まったら、肢を軽く触って注意を促す」(p.16)と述べています。

実際に搾乳を拝見しましたが、スタッフの皆さんは一切声を出さず、的確に搾乳作業をこなしていました。
無言を決めた背景には、小さな声の基準が曖昧であることといったものがあったそう。ならば「あいまないなルールは、なくしたほうがよい」と無音の搾乳をマニュアル化したと言います。
人の声のボリュームは、それぞれ。そして気分次第で大きくも小さくもなりがちです。そこに疑問を感じ、「あいまいなルールはなくす」と判断した同農場の考えに、なるほど! と共感しました。

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換気は大切です

九州における記録的大雨により、被害を受けられた皆様へ心よりお見舞いを申し上げます。

さて昨日、仕事で姫路にお邪魔しました。基本はさほど高くないものの、高い湿度で体力を奪われたような気がします。乳牛にとっても、高いヒートストレスに晒され続ける時期が続きますね。高温多湿の時期を迎えると、いやでも換気を意識せざるを得ません。

暑熱期に推奨される換気回数は、1時間当たり60回以上とされています(Dairy PROFESSIONAL Vol.11参照)。ファンの能力などから計算できるようですが、一度専門の方に換気回数を計算してもらうとわかりやすいかもしれません。

そして、アンモニアや二酸化炭素は重く、淀みやすいため、これらの発生を抑えることも暑熱と換気のポイントとか。そう、こまめな除糞で糞尿を牛舎からなるべく早く排出してあげることが暑熱対策にも繋がるといいます。

快適な環境で、牛も人も暑熱期を乗り切りましょう。

より良い農場を目指すには

5年ほど前になるでしょうか。朝霧メイプルファームの丸山純さんから連絡をいただき、新宿は歌舞伎町で焼き肉を食べることになりました。そのとき、丸山さんはプレゼンテーション資料を広げ、農場の改善へのヒントを一冊にまとめたいと熱心に説きました。その熱意は、Dairy Japanでの連載、そして書籍『若い酪農家が奮闘して気がついたこと…』の発刊という形で実現しました。
前著発刊から3年。より実践的なミーティングの進め方や、農場の信念の形成方法、さまざまな読者からの質問への回答など大きく増補改訂し、『こうすれば農場はもっとうまく回る』を発刊することができました。
PDCAは常に回し続けてこそ、意味をなします。今回の増補改訂は、朝霧メイプルファームが旺盛にPDCAを回し続けていることの証でもあります。
そして本書の見どころの一つは、著者の表現手法にもあります。専門書の枠にとらわれない自由で、ユーモラスな表現は、読み物としても一読の価値があります。
本書を読めば、誰でもきっと農場をもっとうまく回すためのヒントが得られます。

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乾乳牛舎で光周期コントロール

写真は兵庫県のH牧場の乾乳舎です。
以前は開放型のフリーストールだったものを、塩ビ材で覆い、ハイブリッド換気牛舎に改造したものです。向かって右が乾乳牛を、左がフレッシュ牛と繁殖除外牛を管理するエリアです。
きっかけは光周期コントロール。搾乳牛舎で長日管理を始め、乾乳舎でも光周期をコントロールしてみようとはじめたとのことです。
しかも、この乾乳牛舎にはフレッシュ牛も同居。短日管理の乾乳牛と長日管理のフレッシュ牛を同居させることには頭を悩ませたと言います。
現在は、飼槽上部に遮光のための仕切りを付け、フレッシュ牛側からの光が乾乳牛エリアに入らないようにコントロールしています。
夜間は作業のため赤色のランプを灯しています。赤色に反応しない乳牛には暗く感じ、人には作業できるだけの光量が得られるとのこと。
乾乳牛舎での光周期コントロールを始めたことで、ピーク乳量の増加を実感できるようになってきたとH牧場さん。
詳細はDairy Japan7月号で。

気持ちの良い眺め

平成の時代が終わり、令和が始まりました。昭和生まれの私にとって、令和は三つ目の元号。気持ちも新たに新しい時代を過ごしていきたいものですね。

さて、写真は先日お邪魔した香川県のA牧場。ゆったりと横臥する牛達を写真に収めることができました。

取材でお邪魔する私達記者は、農場では部外者です。そのため、牛達はどこかそわそわしたり、興味を示して寄ってきたりと普段とは違う動きをすることが多いでしょう。そのため私達は写真を撮る前に、ゆったりと牛舎を回り、牛達の警戒心を解くことから始めます。

この仕事を始めた頃、元ウィリアムマイナー農業研究所日本事務所の伊藤紘一氏に牛舎での立ち居振る舞いを教えていただきました。「穏やかにゆったりと移動すること、手は極力見せないこと、死角から近づかないこと、ブーツカバーは音の出ないように慎重に足を運ぶこと」などなど。基本中の基本ですが、牛舎に入るときには、いつもこの言葉を思い出します。