搾乳ロボットの可能性

デラバル株式会社が開催した「AMSカンファランス」に参加してきました。

AMS=Automatic Milking System、つまり搾乳ロボットをテーマにしたカンファランスです。同社が日本で搾乳ロボットを発表して20年が経過したといいます。そして今、労働力不足や労働負担の大きさから、搾乳ロボットへの注目は高まり、国内で急速に普及しました。

カンファランスではユーザーからの搾乳ロボットシステムの使い方、牛群管理ソフトの利用方法、課題などが伝えられたほか、同社の技術者から最新情報の提供、ロボット牛舎デザインの考え方など幅広い情報が提供されました。

搾乳ロボットは単に搾乳を自動化するだけでなく、各種センサーやそこから得られる情報の分析によって、乳牛の健康管理や繁殖管理、生乳の安全・安心にも寄与する総合システムになっています。今回発表したユーザーの皆さんは、搾乳からの開放で得られた時間をデータに基づいた牛群管理、そして牛の観察に割いているということが共通した声でした。今流行りの言葉でいえば、ICT、IoTを酪農でフル活用しているということでしょうか。

海外では放牧と搾乳ロボットを組み合わせたり、ボックス型の搾乳ロボットとロータリー式搾乳ロボットを組み合わせた複合型搾乳ロボットシステムを構築したりと、さまざまな形で活用していると言います。国内でも複数台の搾乳ロボットを設置した大規模農場を運営する例も散見されるようになりました。今回のカンファランスに参加して、搾乳ロボットとその利用には、まだ可能性がたくさんあると感じました。

強制換気牛舎

写真は岡山県のK牧場のフリーストール牛舎です。

K牧場は今年、新たに大型フリーストールを稼働させました。牛舎は横抜き式の強制換気牛舎。ミルキングパーラーを挟んで反対側にも同様の強制換気牛舎がありますが、新たに建てたほうが換気効率が良いと言います。

取材時はまだ暑熱が残る頃。汗をかいてから牛舎内に入ると、寒く感じるほどでした。

そして、今回K牧場が選んだ排気ファンは82インチと超大型のもの。排気側にズラリと並ぶファンは壮観でした。

暑熱期は終わり、すでに冬の便りを耳にしますが、冬も換気は大切です。牛舎内の環境は乳牛の健康、そして乳質にも大きく関与します。ぜひ、寒い時期も換気を考えてみたいものです。

新規就農

静岡県の朝霧高原で一人酪農を営むKさん。
Kさんは大学卒業後、国内外での実習や酪農ヘルパー、酪農場でのアルバイトを経て2011年に新規就農しました。土地と建物は賃貸契約。新規就農に際しては乳牛の導入や老朽化した施設の更新を100%自己資金で賄ってスタートしたといいます。借金ゼロでの就農です。
非農家出身の方が新規就農するには、高いハードルがいくつもありますが、その最たるものは「資金」ではないでしょうか。施設・設備を賃貸とすることで、初期費用は抑えることができる。そんな例を見たように感じます。
そんなKさんも、ここで就農して8年。次のステップを見据えて、日々邁進しています。
名実ともに自分の牧場を持つーーその夢に向かって。

周知のとおり、酪農家戸数は減少の一途をたどっています。
個々の酪農経営における経営継承がこれまで以上に進むことはもちろん、Kさんのような新規就農者を増やす取り組みも、また強く求められるものなのではないでしょうか。

農場HACCPのメリットはコミュニケーション

先日、岡山県のY牧場にお邪魔しました。
Y牧場は今年、農場HACCPの認証を取得しました。そこで、Yさんに農場HACCP取得までの経緯と取得によりメリットをお聞きすると、「農場内外のコミュニケーションがきちんと取れるようになったこと」「PDCAサイクルを回せること」と答えてくれました。
もちろん、これまでもコミュニケーションがなかったというわけではありませんが、生産・管理工程を議論したり、定期ミーティングをすることで、よりコミュニケーションが深まり、また課題整理をしていくことでPDCAサイクルが回るようになったことのことです。
先般Dairy Japanニュースでお伝えした「北海道農場HACCP研究会」には楽農畜産生産者や関係者、学生など述べ262名が参加しました。これは、農場HACCPに高い関心が寄せられていることを示しているのではないでしょうか?
Dairy Japan11月号では、認証を取得した農場に、取得のきっかけや取得までの道のり、メリットなどを取材したルポ特集をお届けします。ぜひお楽しみに。

DMIを高める挑戦

先日、10月号の取材でお邪魔した岐阜県のA牧場。
テーマはDMI。いかに喰い込ませることができるかへのチャレンジです。
A牧場では夏場、TMR調製の際に1頭当たり35kgの加水をして、高水分のTMRを給与しています。TMRを強く握って水分が垂れない程度という表現がわかりやすいかもしれません。
これは、夏場にTMR中の水分が蒸発して選び喰いしてしまうのを防ぐための処置だと言います。そしてプロピオン酸を添加して変敗防止をしています。
そんなA牧場。取材時には長年の使用によって傷んだ飼槽のレジンのやり直しをするタイミングでした。取材後にAさんが送ってくれた写真は、真新しいレジンを再施工した飼槽。牛がいるなかでの施工とあって、小分けに再コーティングしたそう。傷んだ飼槽では残飼が取り切れず、それが変敗してDMIを落とす要因になっていたのではないかとのこと。再施工によって、これらの問題が解決して、より高い生産になることが期待されます。

(写真提供=A牧場)