搾乳ロボット8台で増産中のKalm角山(北海道江別市、百瀬誠紀代表取締役)は11月、酪農で初となるJGAP(適正農業規範)認証を取得した。JGAPは食の安全や環境保全に取り組む日本の農場に与えられる認証制度であり、畜産版は今夏に運用がスタートしたばかり。
同牧場は、サツラク農協組合員5戸によって設立され平成25年に稼働。480頭収容のフリーストール牛舎に、国内最多となる8台の搾乳ロボットを装備し、従業員12名で増産を続けている。昨年度の出荷乳量は4579t、今年度は5000t超が見込まれる。また牧場は昨年7月に、農場HACCP認証も取得している。
●HACCPは幹の認証、GAPは枝葉の認証
農場HACCPとGAPついて同牧場の川口谷仁専務取締役は、「前者は牧場の健全運営に対するシステム認証、後者は適正農場の生産物に対する製品規格認証だ。ゆえに木に例えるならば、牧場運営という幹にHACCP認証がなされ、そこに生い茂る枝葉(生産物)にGAP認証がなされることで、大きな約束と信頼を得らえる木ができる」とそれらの取得意義について語る。
●迅速な取得は支援メンバーのおかげ
同牧場のJGAP取得は、9月に書類申請、10月に現地審査、11月13日に認定と、極めて迅速に進行した。それには、農場HACCP認証農場はJGAP畜産版基準のうち、畜産物安全性と家畜衛生の基準項目を免除されるという理由ばかりでない。あとの基準項目である、労働環境、アニマルウェルフェア、環境保全などについては、「農協、専属の管理獣医師、社労士はじめ、農場を日頃から支えてくれるメンバーのおかげで、既存データをJGAP認証基準に沿って集約することで申請作業ができた」と川口谷専務は言う。
●取得メリットの第一義は利益優先にあらず
農場HACCPとGAPの取得メリットについて川口谷専務は、「どちらが利益(お金)につながるかということを議論しがちだが、それを先に考えると、本来の目的がくるってしまう」と言う。メリットの第一は、「より良い牧場運営ができ、各自がプライドを持って仕事ができる職場環境ができ、事業体として成長していけること」と指摘。次に、「JGAP認証の取得でサツラクの牛乳乳製品に対して消費者のプラスイメージが生まれるし、顔の見える商品も作っていける」と今後の活用を語る。
●安全・安心から約束・信頼へ
「間違いなく日本の牛乳乳製品は安全・安心だ。だが、その裏づけを問われると説明に手間取ることもある。そこで農場HACCP、JGAPが活かされる。牧場の運営・生産記録をいつでも開示できることを消費者に約束し、信頼を得ることができる。これからは、安全・安心から約束・信頼へとシフトしていくだろう」と川口谷専務は語る。