子牛の生来行動と学習行動を見抜くカウセンス

全国各地の酪農家の子牛を預かり、健康な初妊牛に育てて戻す――その管理技術とセンス、そして繁殖成績にも定評のある十勝管内のE育成牧場を取材させていただきました。

上牧された子牛は、まず、この若齢牛舎で飼養します。
この牛舎、手前半分の屋根は透明、奥半分の屋根は遮光になっています。
理由を聞いて、感激しました。

その理由とは、「子牛は明るい場所で草を食べ、暗い場所では残す」という経験則から。
「子牛は肉食獣に襲われやすいから、明るくて周囲がよく見えるところで草を食べ、お腹がいっぱいになったら安心できるところで寝る、という本能があるのだと思います」とEさんは言います。

子牛の生来(生まれながらの)行動と学習(生まれてから学ぶ)行動を見抜いて、それを現場に応用する見事なカウセンス(カーフセンス)に脱帽でした。

※詳報はDairy Japan 4月号で。

IoTは難しい?

写真は、先日お邪魔した静岡県のA牧場のフリーストール牛舎内の様子です。

A牧場は最近、牛床マットをウォーターベッドに更新したそうで、ご覧のように牛群がきれいに横臥する様子を見ることができました。

A牧場を訪ねたわけはウォーターベッドに更新したアフターを見るためではなく、デザミス株式会社が提供するUmotionの使用感を取材するもの。約1年使うなかで見えてきたもの、期待感などを聞きました。

詳細はDairy Japan5月号に掲載しますが、Umotionでは横臥や移動、反芻、採食、飲水など乳牛の行動を記録することで、さまざまな情報を得ることができます。カウタイム・バジェットを見える化するというのがわかりやすい表現かもしれません。これによって、発情はもちろん、各種疾病も早期に発見することができるというものです。

デザミスは「現状、センサーの実力は人にかなわない」と人の観察眼の高さを示しますが、社員間に観察眼の差があったり、労働力が不足して観察時間が満足に得られないといった状況では、力強いツールになりえると思います。

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)といった言葉はどこか難しい印象を与えますが、使いやすく「調律」されたアプリケーションは、実にユーザーフレンドリーだと感じました。

理想の分娩房とは

先週開催された酪総研シンポジウムで、石井三都夫氏(石井獣医サポートサービス)は、理想の分娩房について、以下のポイントをあげました。
・クロースアップに隣接している
・仲間を見られる
・単独になれる
・広い
・壁がない
・寝起きがしやすい
・清潔である
・水槽、給飼場がある
・できれば監視カメラ、吊り上げる施設もあると良い

さらに椋本正寿氏(北海道農政部・上席普及指導員)は、分娩房に“囲い”を設けると、その中で分娩する率が2倍に高まり、母牛は安心して分娩できることなどを紹介しました。

「エサ(TMR)運搬用コンテナ」で時短

釧路管内のH牧場、ご自身が考案した「エサ(TMR)運搬用コンテナ」です。
フリーストール牛舎から、別棟の繋ぎ牛舎の牛に与えるTMRを、これで運びます。

フリーストール牛舎でTMR給飼のとき、このコンテナを牛舎から出てすぐの所に置いておき、ミキサーワゴンで飼槽端までTMRを落とし終わって外に出たら、このコンテナにも落とし入れる、という使い方です。
このコンテナは、スキッドローダーのロールフォークを差し込んで持ち上げて運搬します。
その際、リングでコンテナをロックしているので、そのままバラ置き場で中身を投げ落とす(ダンプ)ことができます。

このコンテナには約300kgのTMRが入り、1往復で作業が終わります。
TMRの残飼も、このコンテナに入れて育成牛舎に運びます。
「このやり方で労働時間の短縮につながっている」とのことです。

※詳報はDairy Japan 3月号で。

バーンミーティング

先週、静岡県のA牧場を舞台に行なわれたバーンミーティングを取材してきました。乳房炎コントロールがテーマで、酪農家5名を含む18人が参加しました。写真は快晴に恵まれた2日目に撮影した富士山です。

バーンミーティングでは参加者や講師の皆さんで搾乳の様子を視察したり、牛舎内をくまなく見て回るなどした後に、乳房炎コントロールと乳質向上に向けた取り組みを議論しました。

詳細は1月号で紹介しますが、舞台となったA牧場のJさんは、「皆さんに施設や作業を見てもらい、気づいたことを指摘してもらえたことがうれしい」と言い、第三者目線が入ることで農場の改善が進むことを実感していました。そして昨日、Jさんは「当日皆さんに指摘していただいたことは、即改善しました!」と嬉しそうに電話をくれました。

今回のポイントは、改善に向けたアドバイスを即実行したことに尽きると思います。時が経ってしまえば、「まあいいか」とやり過ごしてしまうかもしれません。今度は改善の成果を聞くことを楽しみにしています。