想定以上のダメージ

「生産抑制で昨秋に数十頭を淘汰したが出荷乳量は若干下がったくらいだった」と言うSさん(十勝管内)。
そこで年明けにさらに数十頭の淘汰と早期乾乳でようやく計画数量以下にした。
搾乳頭数は結局、2割以上減ってしまった。
Sさんは「生乳の減産は想定以上に搾乳頭数を減らさなければならないものだ。何のための寝床なのか……」と空間が目立つ牛舎で顔をしかめる。
こうした乳牛頭数の減少は、それこそ想定以上の生乳生産基盤の弱体化、産業の後退となり兼ねない。

採食しやすさの違い?

先日、静岡県のO牧場さまへ伺いました。O牧場は搾乳牛をコンポストバーンで管理し、良質乳の生産に力を入れている牧場の一つ。

到着後、牛舎内をぐるりと一周しながら管理の概要をお聞きしている際に気づいことが。

それは、飼槽のあるスペースではTMRの減りが速いということ。写真ではわかりにくいかもしれませんが、ません棒のエリアは連動スタンチョンのエリアに比べて明らかにTMRが減っていました。

この飼槽エリアをタイムラプスなどで撮影・解析したら、「どのような牛(社会的優劣の差)」が「いつ」「どこで」採食しているのかが、より深く理解でき、群全体のDMI向上へのヒントが見つかるかもしれませんね。

地の物副産物

以前訪れた川西郡のC農場にて、TMRに規格外の長芋が含まれているのを発見。

「周辺は長芋の産地で、近隣の長芋農家に廃棄品を分けてもらっている」とのことでした。牛はこれが大好きなんだそう。牛はかなりグルメのようです。

また、ある農場では、バナナの皮などが手に入るとのことで、「北海道でバナナ!?」と私は思ったのですが、生産者ではなく、物流拠点で廃棄になるものを譲り受けているようです。

農場、加工場、流通の拠点、食品副産物や規格外の農産物が発生する場所は意外と多いのかもしれないと思いました。棄てるものをエサに。お互いに良い活用ができているなと改めて実感。

それにしても、TMRに混ざっている長芋は、食べたくなるくらい美味しそうでした。

 

繁殖状況を可視化

先日、大分県のM牧場にお邪魔した際に教えてもらった知恵と工夫です。

M牧場は対尻式の繋ぎ牛舎。牛の頭上を通るパイプラインに「布団バサミ」がかけられていました。色はピンクや青、黄色など。「これは何ですか?」と訪ねると、牛ごとの繁殖状況を誰でも、簡単に把握するために考えたものと答えてくれました。ピンクは妊娠牛、青は授精後で再発情の可能性あり、注意を要する牛……。このように牛の状態を可視化することで、搾乳牛の妊娠頭数や要注意牛をパッと見渡すことができます。

この布団バサミは、奥様がいろいろな100円均一ショップをまわって探し当てたものだと言い、「普通の布団バサミは両手で開かなければかけられませんが、この布団バサミは片手でスッとかけられるんです」と詳しく教えてくれました。

牛舎に取り付けられた繁殖ボードと布団バサミ、そして最新の牛群管理ソフトの三つを上手に使って繁殖成績向上につなげています。

周産期管理を省力・効率化

先日、久しぶりに広島大学を訪ねました。テーマは周産期の管理。
乳牛栄養学が専門の同大・杉野教授に周産期の栄養管理について、そして同大での実際の管理についてお話を聞きました。
まず大前提として、「乾乳前に肥らせないこと」と杉野教授。BCS3.25を目安にしているとのこと。さらに「乾乳期間を極端に短縮すると、次産時の乳量に影響する」として、同大では乾乳期間を45日以上設けるようにしているとも。
さて、乾乳期の飼料管理。同大学は農水省の競争的資金で広島大学を中心としたコンソーシアムと全酪連で開発したドライコンプリートのみ。これを現物で14kg/日給与するだけだと言います。乾乳は一群管理で、クロースアップにあたる期間は分娩後7から10日のルーメン馴致期間なのだと教えてくれました。
ドライコンプリートの給与によって、技術職員さんの作業負担が大きく減ったこともポイント。
今回のルポでは、農場での管理の紹介に合わせて、杉野教授に周産期管理のポイントについて、日頃耳にする疑問に答える形で収録させていただくことになりました。
鋭意編集中のDairy Japan4月号の発刊をぜひ、お待ちください。