7月号のルポで香川県のA牧場を訪ねました。
A牧場は一昨年3月に新たな育成牛舎を稼働させ、以来、子牛の死亡事故はゼロ。
ハイブリッド式の横断換気牛舎は、抜群の換気とステージに合わせた施設設計で、良好な育成環境を実現しています。
Aさんは2018年にハイブリッド式トンネル換気の搾乳牛舎を稼働させ、以来、導入ゼロで増頭を果たしてきました。そんなAさんの持論は、「自分の思うような牛を作っていくことが酪農の面白さであり、基本」であり、「育成は建物で例えるなら基礎といえる部分」と話します。
今後、さらなる投資も控えるA牧場。次回訪れることが、楽しみでなりません。
投稿者: Tomohiro
酪農キーワード
月上旬の今、月刊誌の進行は最終を迎える6月号と次の7月号の進行が重なるタイミングでもあります。
7月号の原稿を整理し、作業を進めている最中なので進行の一部について紹介します。
月刊Dairy Japanでは「誰にも聞けない酪農キーワード」が好評連載中です。連載タイトルのとおり、酪農のさまざまなキーワードを解説していただく企画です。
「知っているようでうる覚え」「今さら、この言葉の意味って人に聞けないな」というものからセミナーなどでよく耳にするものの、その実、深く内容を知らないもの、新しい言葉などを広島大学・杉野利久教授を筆頭に、さまざまな方に解説していただいております。
7月号は21回目で、キーワードは「GLP-2」です。GLP-2の詳細は本誌解説をお待ちいただきたいのですが、腸管粘膜の増殖や消化吸収能力の促進、粘膜バリアの増強などを担うホルモンです。ここでポイントになるのが初乳給与とGLP-2の関係。初乳給与の量や質、給与までのタイミングによって、血漿GLP-2濃度が低推移する傾向があると杉野教授は解説します。
酪農には多くの専門用語が存在します。そのなかから「次はどのキーワードにするか」を、担当である私と杉野教授で相談して連載を進めます。とかくこうした連載は、回を重ねるごとによりミクロなテーマに行きがちです。また、より新しいキーワードを探そうとします。
そんなとき、杉野先生と私は一歩下がって、マクロな視点でキーワードを探ることにします。もちろん、読者や取材先の酪農家さんからリクエストがあれば、それを優先しますが……。
今日、GLP-2の原稿の確認をしながら、次のキーワードについて話し合いました。8月は暑い、飲水量も増える、水は最も基本的な飼料、ということで次回は水をテーマにしようと。
同連載は、大きなボリュームを占める「はじめに」も好評です。編集をする際、文頭から目をとおしていきますが、「この導入から、どう本題に行くのか」といつもワクワクしています。そして「はじめに」の締めでは、きとんと本題に着地する、この流れが同連載の味でもあります。
ぜひ、毎回の解説を楽しみにしていただければと思います。
また、解説してほしいキーワードも随時募集しています。ご要望は弊社e-mailまで。
繁殖を見える化
先日、6月号の取材で岡山県のI牧場をたずねました。
Iさんは「乳量の増加に反して繁殖成績が落ちてきた」と、悩んでいたそう。
そこで、繁殖成績向上を目指してIoT機器の導入を決断。今年2月からIoTを用いた繁殖管理をスタートしました。
これまで1人で発情発見から授精までこなしていたIさんにとって、IoT機器は「繁殖を見るもう一つの目」といえるもの。
発情を見える化してわかったことは、「これまで授精タイミングが早かった」というもの。また、発情発見率も2割近く向上したとも。
Iさんは「もっとさまざまなデータを見てみたい」と、IoT機器に興味津々。今後、暑熱期の行動分析や初産と経産牛の行動の違いなど、より多くのデータを分析して農場の成績向上に取り組んでいきたいと話します。
取材時に印象的だったことは、牛舎に入る際にごく自然にタブレットを持つIさんの姿。とてもスマートでした。
https://www.youtube.com/watch?v=l5CP0OtODRc
自ブランドはモチベーションアップに
写真は、兵庫県内の乳製品製造工房で撮影したウォッシュタイプのチーズです。
兵庫県内のM牧場は、この工房にヨーグルトとチーズの製造を委託。今後は商品名に牧場名を拝した「自ブランド」のヨーグルトが販売される予定とか。
Mさんは、「自ブランドの乳製品は、自分の生乳のみを使える。より良い乳質の生乳を生産しなければというモチベーションの持続につながる」と話し、乳の付加価値向上だけでなく、ブランド化が生産意欲の向上にもつながると言います。
受託する工房の代表も、「M牧場の生乳は、乳質・風味はもちろん、チーズの歩留まりも良い」と太鼓判を押します。
撮影したチーズは、まだ熟成中。試食はできませんでした。次に伺うときには、ぜひ味わってみたいものです。