新しい乳房炎注入剤「ピルスー®」:ゾエティス・ジャパン

2014 年 2 月 17 日

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ピルス

ゾエティス・ジャパン(株)は、米国で20年に渡り泌乳期の乳房炎治療に用いられてきた泌乳期用乳房注入用抗菌剤「ピルスー®」を、この春、国内においても発売することになった。特長・注意点は下記のとおり。

【出荷禁止期間:乳60時間】

本剤はブドウ球菌およびレンサ球菌に対して抗菌力を発揮し、112日間の投与および乳の出荷禁止期間:60時間(2日半)が承認されている。

【新規系統の抗生物質】

「ピルスー®」は牛においては国内初となるリンコマイシン系の抗生物質であるピルリマイシンを主成分としており、リンコマイシンの約20~30倍の抗菌力を有している。抗菌範囲はブドウ球菌やレンサ球菌等のグラム陽性菌、嫌気性菌およびマイコプラズマ類である。

【細胞・乳腺組織内への移行に優れる】

「ピルスー®」が属するリンコマイシン系の抗生物質は、体内、とくに細胞・組織内への移行に優れており、「ピルスー®」は乳房内に投与された内の約50%が体内に吸収され、肝臓・腎臓を経て代謝後、糞尿中に排出される。

 

 乳房炎の原因菌のなかでも、難治性といわれるような細菌、特に細胞内で増殖をするような細菌による乳房炎の治療に際しては、投与される乳房注入剤の成分である抗生物質自体が、細胞内に移行する(あるいは移行できる)機能が必要になるが、現在汎用されているセフェム系薬物は残念ながら細胞内への移行は乏しく、細胞内濃度は細胞外濃度に比べて低いことが確かめられている。

 

 そのため、1分房に「ピルスー®」を投与しても体内循環の後、他の分房からも「ピルスー®」の成分であるピルリマイシンが検出される可能性がある。

【体の免疫機能(機構)に対してプラスにはたらく】

「ピルスー®」が属するリンコマイシン系の抗生物質は、体を防衛する免疫機能の中心的存在である白血球に対して、プラスにはたらくということがわかっている。

 

 すなわち、白血球の感染部位への移行、リンコマイシン系薬物自体の白血球内への移行、白血球が細菌を捕食する作用やそれを消化・処理する作用を助けたり、促進したりすることがわかっている。

【注意点:青色色素を含有していない】

従来の乳房注入用の抗菌剤は青色色素を含有した軟膏剤となっていた。現行流通製品においても、青色色素が添加されている。しかしながら、とくに泌乳量がピークを過ぎた牛において、乳汁中に色素だけが残留し、注入剤の主成分である抗菌物質は既に残留していない場合があって、乳が出荷できないことによる生産者の方々の損失が極めて重要との報告がなされ、生産者団体・関係機関からの青色色素の乳房注入剤への添加を任意とするように法改正が望まれていた。それを受けて、平成18年、法改正が行なわれ、乳房注入剤への青色色素の添加が任意とされたと同時に、出荷禁止期間を遵守せず出荷され、残留が認められた場合、罰金などの罰則規定が適応されることになった。この「ピルスー®」はそのような審議結果・法改正後、初めて青色色素を含有しない製剤となる。

 

 本剤を使用する際には、必ず使用牛へのマーキングやレッグバンド等によって対象牛を確実に認識し、出荷禁止期間を遵守する必要がある。

 

 また、乳汁中から本剤を検出可能な迅速判定キットは現在のところないため、公定法であるペーパーディスク(PD)法により最終的な残留の有無の確認が必要。

 

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