農場HACCPのメリットはコミュニケーション

先日、岡山県のY牧場にお邪魔しました。
Y牧場は今年、農場HACCPの認証を取得しました。そこで、Yさんに農場HACCP取得までの経緯と取得によりメリットをお聞きすると、「農場内外のコミュニケーションがきちんと取れるようになったこと」「PDCAサイクルを回せること」と答えてくれました。
もちろん、これまでもコミュニケーションがなかったというわけではありませんが、生産・管理工程を議論したり、定期ミーティングをすることで、よりコミュニケーションが深まり、また課題整理をしていくことでPDCAサイクルが回るようになったことのことです。
先般Dairy Japanニュースでお伝えした「北海道農場HACCP研究会」には楽農畜産生産者や関係者、学生など述べ262名が参加しました。これは、農場HACCPに高い関心が寄せられていることを示しているのではないでしょうか?
Dairy Japan11月号では、認証を取得した農場に、取得のきっかけや取得までの道のり、メリットなどを取材したルポ特集をお届けします。ぜひお楽しみに。

酪農振興なくしてチーズ振興なし

“酪農振興なくしてチーズ振興なし”——先日の蔵王酪農センターへの取材で印象深かった言葉です。
取材を受けてくれた工場長は、「今後外国産チーズの輸入が増えるなかで、国産チーズが生き残っていくためにも、抜群の良質乳を生産する日本の酪農家が必要不可欠だ」と語ってくれました。
酪農家が搾った良質な生乳を一番良い状態でチーズに変身させる、まさに”生乳を使うプロフェッショナル”でした。
写真は5000ℓもの生乳が入るチーズバットで撹拌している様子です。
今月末発売の『Dairy PROFESSIONAL Vol.15』で詳しく紹介しています。
ぜひご覧ください。

飼槽のTMRはどう動く?

十勝南部の農業改良普及員さんが、飼槽に給飼されたTMRが牛達に採食されながら、時間経過とともに、どのように形を変え、移動し、中身を変えていくのか、等々を細かく調査して結果をまとめました。

この調査は、6農場において、夏季および冬季の2回、給飼から次の給飼までの12時間、飼槽のエサの動きと牛の採食行動を調査したものです(2農場では冬季24時間観察)。
その目的について普及員さんは、「皆さんネコの手も借りたい忙しさ。だからこそ、牛の採食要求と人の労働軽減に配慮した飼槽管理の方法を、生産現場での調査結果から検討したかった」とのことです。

調査結果は、牛達が最も採食する飼槽の位置(=採食ターゲット位置)は飼槽隔壁から30~60cmだったこと、牛達の鼻や舌で押されたTMRは給飼1時間後で飼槽隔壁から75cm付近を頂点とする山を形成していたこと、等々が示されています。

それらの結果から以下を提案しています。

【大前提】
□飼槽を空にしない(乳牛の採食行動を阻害しない)。
□エサ寄せはできるだけ頻繁に行なう(エサ寄せロボットは有用)。

【労働力がない場合】
《給飼のタイミング》
□夕方1回給飼
□ミキサー容量が不足する場合は朝夕2回給飼でTMRの給与配分を調整(例:夕方70%・朝30%)

《エサ寄せのタイミング》(朝夕2回給飼の場合)
□給飼後1時間以内
□給飼後4時間以内(採食行動に合わせたエサ寄せ)

《飼槽内でエサを置く場所》(給飼・エサ寄せする場所)
□飼槽隔壁から30~60㎝(飼槽ターゲット位置、給飼後1時間でTMRの高さが最も低くなった位置)

※詳報はDairy Japan 10月号「飼槽のTMRはどう動く?――給飼・エサ寄せのベストタイミングとは」で。

DMIを高める挑戦

先日、10月号の取材でお邪魔した岐阜県のA牧場。
テーマはDMI。いかに喰い込ませることができるかへのチャレンジです。
A牧場では夏場、TMR調製の際に1頭当たり35kgの加水をして、高水分のTMRを給与しています。TMRを強く握って水分が垂れない程度という表現がわかりやすいかもしれません。
これは、夏場にTMR中の水分が蒸発して選び喰いしてしまうのを防ぐための処置だと言います。そしてプロピオン酸を添加して変敗防止をしています。
そんなA牧場。取材時には長年の使用によって傷んだ飼槽のレジンのやり直しをするタイミングでした。取材後にAさんが送ってくれた写真は、真新しいレジンを再施工した飼槽。牛がいるなかでの施工とあって、小分けに再コーティングしたそう。傷んだ飼槽では残飼が取り切れず、それが変敗してDMIを落とす要因になっていたのではないかとのこと。再施工によって、これらの問題が解決して、より高い生産になることが期待されます。

(写真提供=A牧場)