昨日、わが国初の機械を利用した、「家畜糞尿の環境に優しい散布方法」の試験現場を見てきました。
牧草地への糞尿(スラリー)散布で近年問題視されていることの一つに、「アンモニア揮散」があります。
その問題の一つは、環境への悪影響。
例えば、通常より強力な酸性雨を発生させる、土壌の酸性化、森林破壊、河川や湖沼の富栄養価などです。
問題のもう一つは、糞尿の大切な肥料成分であるアンモニアを損失していることです。
そこで酪農学園大学・酪農学部・土壌植物栄養学研究室(松中照夫教授)と同大学附属農場は、北海道立根釧農業試験場、北海道立畜産試験場との共同研究の一環として、わが国初の機械を利用して、「家畜糞尿の環境に優しい散布方法」の調査試験を行っています。
調査方法は、糞尿からのアンモニア揮散を抑制するために開発された機械(2種類)と、従来の機械で散布した場合とを比較して、どれくらい環境に優しいのかを検証するというもの。
その新機械とは、「ドラッグホース」と「カットインジェクタ」です。
《ドラッグホース》
トラクタに糞尿供給用のホースをつなぎ、供給された糞尿を何本ものホースに分けて、草地表面に筋状に置いていく機械。
今回の試験で用いたタイプは、幅15mに50本のホースが30cm間隔で装備されている。
この機械の特長の一つは、糞尿を貯留槽などからホースで圧送するためタンカーが不要であること。
したがって、タンカー補給作業の時間が不要となる。
もう一つの特長は、糞尿のタンカーを引っ張らないので軽量であること。
このため、春先の草地への散布時期を早めることができる。
《カットインジェクタ》
これは北海道農業開発公社が独自開発したもので、トラクタが草地表面に筋状に切れ目を作り、そこに糞尿を注入した後、その切れ目を土で覆う(カバーする)機械。
この機械の特長は、糞尿が空気に触れないので、アンモニア揮散がほとんど発生しないこと。