繁殖状況を可視化

先日、大分県のM牧場にお邪魔した際に教えてもらった知恵と工夫です。

M牧場は対尻式の繋ぎ牛舎。牛の頭上を通るパイプラインに「布団バサミ」がかけられていました。色はピンクや青、黄色など。「これは何ですか?」と訪ねると、牛ごとの繁殖状況を誰でも、簡単に把握するために考えたものと答えてくれました。ピンクは妊娠牛、青は授精後で再発情の可能性あり、注意を要する牛……。このように牛の状態を可視化することで、搾乳牛の妊娠頭数や要注意牛をパッと見渡すことができます。

この布団バサミは、奥様がいろいろな100円均一ショップをまわって探し当てたものだと言い、「普通の布団バサミは両手で開かなければかけられませんが、この布団バサミは片手でスッとかけられるんです」と詳しく教えてくれました。

牛舎に取り付けられた繁殖ボードと布団バサミ、そして最新の牛群管理ソフトの三つを上手に使って繁殖成績向上につなげています。

周産期管理を省力・効率化

先日、久しぶりに広島大学を訪ねました。テーマは周産期の管理。
乳牛栄養学が専門の同大・杉野教授に周産期の栄養管理について、そして同大での実際の管理についてお話を聞きました。
まず大前提として、「乾乳前に肥らせないこと」と杉野教授。BCS3.25を目安にしているとのこと。さらに「乾乳期間を極端に短縮すると、次産時の乳量に影響する」として、同大では乾乳期間を45日以上設けるようにしているとも。
さて、乾乳期の飼料管理。同大学は農水省の競争的資金で広島大学を中心としたコンソーシアムと全酪連で開発したドライコンプリートのみ。これを現物で14kg/日給与するだけだと言います。乾乳は一群管理で、クロースアップにあたる期間は分娩後7から10日のルーメン馴致期間なのだと教えてくれました。
ドライコンプリートの給与によって、技術職員さんの作業負担が大きく減ったこともポイント。
今回のルポでは、農場での管理の紹介に合わせて、杉野教授に周産期管理のポイントについて、日頃耳にする疑問に答える形で収録させていただくことになりました。
鋭意編集中のDairy Japan4月号の発刊をぜひ、お待ちください。

安全な作業のために

農水省が公表した農作業死傷事故の統計によると、過去10年間に北海道で発生した農作業死傷事故の36%が家畜との接触で、とくに大型家畜を扱う作業者は注意が必要と記されています、また、フリーストール牛舎では、牛を移動させる際に柵などに挟まれる事故が多く発生していると注意を呼びかけています。
そんななか先日、香川県のM牧場の取材で聞いた作業安全のための取り組みは、まさに前述した事故による負傷を防ぐもの。
牛舎作業では乗馬用のプロテクターの着用で、挟まれ事故による負傷リスクを軽減しているそう。また、搾乳時にはヘルメット着用を義務付け、身の安全を守っていると言います。
「費用はかかるが、スタッフの安全には代えられない」 というMさんの言葉が響きました。
皆さんは、どのように作業の安全を管理していますか?

新年、あけましておめでとうございます。

昨年は酪農にとって、とても厳しい年でした。思い返せば、飼料費の高騰によって弊誌でも自給飼料系の情報を例年よりも多く提供させていただいた一年でした。自給飼料の増産は短期に解決できる問題ではありませんが、海外からの粗飼料や穀類の輸入依存度を少しでも減らすことは、酪農の底力を引き上げることになると再確認することにもつながったのではないでしょうか?

「明けない夜はない」とはよく使われる言葉ですが、わが国酪農もこの苦境から明ける時期が必ずやってくると信じています。そのために、本年も皆様に有用な情報を提供させていただこう――年末に改めて考えた2023年の抱負です。まだまだ厳しい状況が続きますが、酪農業界が前に向かって進めるよう願ってやみません。

冬場の哺乳に

先日、鳥取県のNファームにお邪魔しました。
寒い時期における哺育管理についてお聞きしたのですが、あいにく当日は長袖Tシャツ1枚で過ごせる暖かさ。そこで、Nさんに寒い時期の哺乳ボトルの管理を写真で送っていただきました(写真はNさん提供)。
適温で調乳しても哺乳時にはミルクが冷めてしまうーーそんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。
Nさんは写真のようにお湯を張ったバケツに哺乳ボトルを入れ、ミルクの温度低下を防いでいます。お金がかからず、かつ簡単な方法。
ぜひご参考に。