「雌雄判別精液の受胎率向上」などを報告:畜産草地研究所主催の研究会で
2011 年 10 月 24 日
10月24日(月)、都内で「牛における人工授精の現状と今後の研究課題」をテーマに
研究会が開かれた(主催:畜産草地研究所)。全国から約130名が集まった。
開催挨拶で同研究所の松本光人所長は、
「人工授精は畜産で最も進んだバイオテクノロジー、イノベーションの成功例だが、
近年、初回授精受胎率は低下傾向にある。
それらを克服すべき今後の研究展開を議論したい」と述べた。
講演は、農水省畜産振興課の大藪武史氏が、乳牛における新たな改良増殖目標は、
1:10年後のイメージとして、遺伝子レベル解析で改良を進め、
2:チーズ向けのブラウンスイスや高脂肪率のジャージーなど多品種の改良の支援
3:泌乳持続性の高い、蹄や乳器の良い牛で生涯生産性を高める、
などを目標にした改良を推進させる、と解説した。
受胎率に関し、酪農学園大学の堂地修氏は北海道内の2つの地域の調査から、
頭数規模による平均初回授精受胎率の差は見られず、
繁殖における重要管理チェックシートなどの活用で、農家・技術者双方による、
各地域における酪農体系に適合した技術体制の充実が必要、と報告した。
北海道家畜人工授精師協会副会長の石塚隆司氏は、
発情兆候が明確でない牛が多くなり、適期授精が難しくなったことを踏まえ、
1:農場側は積極的早期授精を選択せざるを得ない状況にあり、
2:繁殖における農家、獣医師、授精師とのコミュニケーションが大切だ、
などと話した。
雌雄判別精液の利用では、リプロ・ETサポート(群馬県)の砂川政広氏は
カテーテルの深部注入により、経産牛でも受胎率50%超の事例を報告し、
判別精液の利用により、3年後の更新牛確保が予測できるので、
和牛や受精卵移植などの副次的生産部門を強化できる、などと報告。
関連して信州大学の濱野光市氏は、判別精液の技術を解説し、
今後の課題として、現在のフローサイトメーター法に替わり得る
判別精液の大量生産技術の開発が必要とした。
参加者からは「国の繁殖目標の柱がしっかりしないと、家畜改良ができない」
「受胎率低下の要因は、精液自体にも問題があるのではないか」などの声が出た。
同研究会は、25日(火)にも行われ、歩数計を用いた事例、機能性サプリメントを
活用した栄養管理による繁殖の向上、新規凍結法による繁殖向上技術の開発
などが報告される予定。(文責:関東支局)
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