畜産農家の自信と誇りがボロボロに
2010 年 5 月 31 日
酪農学園大学が企画した緊急シンポジウム「口蹄疫」で、実家が宮崎県の和牛肥育農家で獣医師を目指している綿屋健太さん(獣医学科2年生)は、地元の生の声を伝えたいとして参加して、涙をこらえながら以下のようにコメントした。
「口蹄疫により、どれだけ農家が苦しんでいるか、仲間の農家から直接聞いた話をさせていただきます。畜産農家の多くは設備投資などをしています。子牛を競りに出したり、肥育牛を出荷した際の収入を借入金の返済に充て、その残りが農家の収入になります。しかし口蹄疫の影響によって5月の競りは中止となり、価格も下がったままで、かなりひどい経営状況となっています。そのため、家畜共済保険に加入していない都城市のある農家は獣医師への診療代を支払うことができず、来月まで待ってほしいとお願いしたと言っていました。川南町で直接被害に遭った30歳代の農家は、自分の牧場の牛がいなくなり、以前の状態に立て直すことはむずかしいと判断し、他県に移って他の職を探すと言っていました」
「直接的な被害以外にも、さまざまな形で被害を受けています。ある農家は、人が集まり感染が広がることを恐れ、祖父の葬式の規模を小さいものとしました。都城市の20歳代の農家は、今のままでは将来が不安だから婚約を取り止めました。僕らと同世代の農家が本当に苦しんでいます」
「農家は、365日どんなに辛くても、儲からなくても、休まず家畜と向き合っています。なぜ、そういうことができるかというと、自分たちがやっている仕事に誇りと自信を持っているからです。宮崎県に関しては、2007年に全国和牛能力共進会で日本一という評価が与えられて、人たちが作った牛に本当に誇りを持って、どんなに辛くても、儲からなくてもやってこられました。それが今、ボロボロに崩れています。何にすがったら良いのかわからない状況なのです。でも、みなさんが、この口蹄疫、ひいては日本の畜産や酪農業について真剣に考えていけば、状況は必ず良くなると信じています」
TrackBack URL :
Comments (0)