宇都宮仙太郎翁顕彰会(瀧澤義一理事長)は1月7日、「第53回 宇都宮賞」の表彰者を、以下の3氏に決定した。表彰式は例年どおり、同翁の命日にあたる3月1日に札幌市で開催する。
●酪農経営の部=加藤賢一氏(帯広市、69歳)
常に「牛も人も同じ家族であり共生の環境にある」という基本理念のもと、乳牛の飼養管理に取り組み、また生乳需給バランスによる変動に対して安定的な供給と乳成分向上を目指してジャージー種を導入し、その生乳から乳製品の開発・加工製造・販売する6次産業化を始め、多様性に富む先駆的な経営の発展に尽力し、(株)十勝加藤牧場を築き上げた。
良質な粗飼料確保のため積極的に自給飼料畑を拡大し、堆肥投入により化成肥料を極力抑制する栽培に取り組み、牧草地は化成肥料ゼロ、飼料用とうもろこしは施肥基準の約4割に抑えて生産し、令和2年11月の検定成績では乳飼比27%、体細胞数平均12.4万を実現しており、自給飼料率の向上と乳質の安定化への取り組みは地域を代表する模範経営である。
昭和63年にジャージー種8頭を導入し、現在は経産牛69頭まで増頭し牛群を二分するほどに拡大し、ホルスタイン種と併せた158頭の搾乳牛の検定成績は、乳量8940kg、乳脂率4.35%、乳蛋白率3.60%、無脂固形分率9.10%と乳成分率の高い牛群を実現している。
●酪農指導の部=高橋芳幸氏(札幌市、72歳)
昭和58年に北海道大学獣医学部に助教授として着任以来、約30年間にわたり一貫して臨床繁殖学研究に従事し、家畜繁殖学の専門家として、とくに酪農分野における教育・研究・普及活動に著名な功績をあげている。
平成26年に北海道家畜人工授精師協会の会長就任後は、北海道家畜人工授精技術研修大会を主催し、道内で活躍する技術者の、調査・研究活動の発表の場として技術の交流・向上に努めるほか、道内の家畜人工授精師や受精卵移植師の資格取得や資格取得後の若手技術者のための講習会を長年務めている。
日本家畜人工授精師協会理事としても活躍し、家畜人工授精師が超音波検査装置を適正に活用するためのルール作成や、平成27年には牛に係る家畜人工授精師資格取得講習会用テキストの全面改訂の編纂にあたるなど、多くの執筆活動を通じて最新の知見や技術の啓発・普及、家畜人工授精技術や受精卵移植技術の裾野を広げ、優れた実践的技術者の養成・育成を通じて、北海道酪農の発展に大きく貢献している。
●乳牛改良の部=穀内和夫氏(大樹町、64歳)
昭和51年に就農し、土作り・草作りの草地改良と、とくに乳器や肢蹄にこだわり、飼養管理のしやすい長持ちする牛群作りを目指してきた。牛群検定や牛群体型審査に積極的に取り組み、効率的な遺伝改良を進めるため、早くから採卵と受精卵移植や性選別精液を活用した自家繁殖による規模拡大に努めており、平成30年に経営を法人化し(株)エンブレム-Kを設立した。
牛群検定成績(平成元年)では、平均乳量1万1420kg、乳脂肪率3.91%、乳蛋白率3.41%、無視固形分率8.96%と乳量・乳成分率の高い牛群を実現し、その高い能力を支える体型審査では、エクセレント(EX)級1頭、ベリーグッド(VG)級21頭、グッドプラス(GP)級45頭を保有している。
これまでにEX級(90点以上)を獲得した17頭すべてが自家生産牛であり、体型・能力のバランスの良さはまさに北海道屈指の牛群である。牛群の遺伝評価である耐久性成分は全国トップ2%以内に入る遺伝レベルであり、長命・連産性に富んだ牛群の作出に努力している。