家族経営と畜産クラスター

「家族経営を大切に」をモットーとする十勝管内K牧場は、労働時間を少しでも減らすための牛舎システム導入や生産体制構築に日々取り組んでいます。

そんなKさんの一言です。
「酪農は土・草・牛と幅広い。それゆえ現代の家族経営を永続させるためには、ある程度は外部委託が必要であることは周知のとおり。1kgの生乳を生産するのに、どれだけの知識・技術・作業・人が関わっていることか。畜産クラスターの真髄はそこにある」

自由貿易が進められていくなかで、畜産クラスター事業が、家族経営の継続のためにもっと活用されるように、という想いがあってのことです。

繁殖成績を改善するとこんなに儲かる!

10月17日付けDJニュースで触れた、第75回北海道家畜人工授精技術研修大会の特別講演「繁殖コントロールの実際」で、石井三都夫獣医師(石井獣医サポートサービス)は繁殖改善効果をインパクトのある金額(儲け)で示しました。
そして、そのための成績目標、さらにその目標達成のための方策としてボディコンディションの重要性について詳しく解説しました。

●年間2476万円の儲け
経産牛120頭飼養で、空胎日数を155日から120日に短縮し、初産分娩月齢を25.5カ月から23カ月に短縮したとしたら、1年間で以下の収入増になると試算される。
・個体販売価格の増加で1260万円
・飼養経費の損失防止で625万円
・乳量増加分で591万円
合計2476万円

●繁殖成績の目標
・分娩間隔400日
・空胎日数120日
・初産分娩間隔23カ月
・平均産次3産
・21日妊娠率25%
・120日妊娠率50%

●なぜボディコンディション・スコア(BCS)は大事か
・アーリーフレッシュチェック時(分娩後7~13日)のBCSは、120日妊娠率および空胎日数に影響している。
・フレッシュチェック時(分娩後14~27日)のBCSは、卵巣状態、120日妊娠率および空胎日数に影響している。
・妊娠鑑定時のBCSは、妊娠+率に影響している。

●BCSおよびBCS適正率
・BCSは分娩後~受胎まで適正に保つことが重要
・BCS目標は、分娩時3.5、繁殖牛3.25、妊娠後期3.25~3.5、乾乳牛3.5
・BCS適正牛率(3.25~3.75)は目標90%以上
・BCS3以下はハイリスク牛なので早めに対処し改善する
・BCSが下がっている間は受胎しづらい
・BCSが上がり基準で授精した牛は受胎しやすい

集乳車の“車寄せ”

北海道渡島管内・八雲町の(株)学林ファームには、ミルクタンクローリー(集乳車)の“車寄せ”があります。
舗装され、屋根も掛けられ、しっかり整備されています。
ローリー運転手さんから、とても喜ばれているそうです。
同ファームは今年、農場HACCPおよびJGAPの両認証を取得しました。

※詳報はDairy Japan 11月号で。

飼槽のTMRはどう動く?

十勝南部の農業改良普及員さんが、飼槽に給飼されたTMRが牛達に採食されながら、時間経過とともに、どのように形を変え、移動し、中身を変えていくのか、等々を細かく調査して結果をまとめました。

この調査は、6農場において、夏季および冬季の2回、給飼から次の給飼までの12時間、飼槽のエサの動きと牛の採食行動を調査したものです(2農場では冬季24時間観察)。
その目的について普及員さんは、「皆さんネコの手も借りたい忙しさ。だからこそ、牛の採食要求と人の労働軽減に配慮した飼槽管理の方法を、生産現場での調査結果から検討したかった」とのことです。

調査結果は、牛達が最も採食する飼槽の位置(=採食ターゲット位置)は飼槽隔壁から30~60cmだったこと、牛達の鼻や舌で押されたTMRは給飼1時間後で飼槽隔壁から75cm付近を頂点とする山を形成していたこと、等々が示されています。

それらの結果から以下を提案しています。

【大前提】
□飼槽を空にしない(乳牛の採食行動を阻害しない)。
□エサ寄せはできるだけ頻繁に行なう(エサ寄せロボットは有用)。

【労働力がない場合】
《給飼のタイミング》
□夕方1回給飼
□ミキサー容量が不足する場合は朝夕2回給飼でTMRの給与配分を調整(例:夕方70%・朝30%)

《エサ寄せのタイミング》(朝夕2回給飼の場合)
□給飼後1時間以内
□給飼後4時間以内(採食行動に合わせたエサ寄せ)

《飼槽内でエサを置く場所》(給飼・エサ寄せする場所)
□飼槽隔壁から30~60㎝(飼槽ターゲット位置、給飼後1時間でTMRの高さが最も低くなった位置)

※詳報はDairy Japan 10月号「飼槽のTMRはどう動く?――給飼・エサ寄せのベストタイミングとは」で。