「乳成分の栄養研究」をテーマにシンポジウム:日本酪農科学会が開く
2012 年 8 月 17 日
8月17日、日本酪農科学会(会長:齋藤忠夫氏・東北大学大学院)は都内で、「乳成分の栄養研究Update」をテーマに平成24年度酪農科学シンポジウムを開いた。
「牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドローム」では上西一弘氏(女子栄養大学)が海外での研究報告を紹介するとともに、日本での20から69歳までの非喫煙者を対象にした試験結果から、牛乳・乳製品が骨の健康だけでなく、メタボリックシンドロームにも有用である、などと報告した。
「乳成分の脂質代謝改善作用・乳清ペプチドを中心に」では、長岡利氏(岐阜大学)が乳成分から高コレステロール代謝改善ペプチドを世界に先駆けて発見したことや、乳タンパク質・乳脂質・乳糖・乳Caなどの脂質代謝改善作用を詳説し今後、より詳細な分子レベルにおける作用機構の解明が望まれる、とした。
「乳中の共役リノール酸・トランス脂肪酸の栄養機能」では河原聡氏(宮崎大学)が、反芻動物の乳に特有の共役リノール酸が持つ抗がん作用や抗動脈硬化作用などを報告し、「ホエイペプチドに潜在する生体調節機能」では吉澤史昭氏(宇都宮大学)が、ホエイ(乳清)中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)を豊富に含むホエイペプチドは未知の機能を秘めた次世代型生体調節因子として注目すべき栄養素である、などと報告した。
シンポジウムの基調講演では、細井孝之医師(国立長寿医療研究センター)が「健康寿命と乳・乳製品」と題し、乳や乳製品は健康のために、さまざまなライフステージで積極的に活用されるべき、と述べた。
その後、明治、森永乳業、雪印メグミルクの各研究所から、乳酸菌、ラクトフェリン、ホエイペプチドの栄養効果などが報告されたほか、30のポスター発表が行なわれた。
現在、日本では国立の研究機関では乳分野は殆ど研究されていない。しかし、大学や食品企業の研究陣が展開している「乳」が人の健康にどのように貢献するかという、微細な研究の一端を伺わせるシンポジウムだった。(文責:関東支局)
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