口蹄疫発生で防疫体制の強化を!

2010 年 5 月 6 日

Filed under: — maetomo @ 3:05 PM 提言

洗浄が一番重要な作業
 4月20日に宮崎県で口蹄疫1)の疑似患畜が確認された。同23日には口蹄疫と確認され、さらに農水省は5月2日、今回確認されたウイルスはアジア地域で確認されているものと酷似していることを発表した。
 5月5日には疑似患畜が確認された農場は20軒を越え、それまでに殺処分の対象となった牛(乳牛含む)は2900頭以上、豚は3万1000頭以上にのぼり、その後も感染は広がり続けている。
 同県では、疑似患畜農場付近の移動制限区域(半径10km)および搬出制限区域(半径20km)措置を講じるほか、消毒ポイントの設置や口蹄疫疫学調査チームによる現地調査などを行なっている。また隣接県でも口蹄疫発生を受け、県内の牛や豚農家などへの全戸調査を行い、石灰の配布、消毒ポイントでの畜産関係車の消毒などを実施し、各市町村でも自主的な消毒ポイント設置が行われている。
 地元では、想像を絶する苦しみのなかにありながら、感染をこれ以上広げないために懸命の努力がなされている。
 日本中の家畜飼養農家は、防疫体制レベルを最大に引き上げなければならない。

●洗浄が一番重要な作業
 畜産環境における防疫対策については、本誌でもたびたび掲載してきた。その基本は「洗浄が一番重要な作業」ということ。ここで3月16日に行われたセミナー内容2)を抜粋したい。講師はバイエル薬品株式会社の岩田隆氏。岩田氏は「見た目にきれいに見えても、病原菌は存在する」と強調。そして消毒効果を阻害するものは有機物(糞尿、分泌物、血液など)であり、畜舎の壁や床には目に見えない汚れがたくさんあり、それらをしっかりと除去(病原体を除去)するための基本は水洗である。
 有機物の効率的な除去は、1.洗剤の使用、2.温水の使用、3.高圧洗浄であり、それらの結果、使用する水量を減らすことができる。そして、「消毒の大切さを再認識しよう。消毒は、1.病気の予防(家畜衛生)、2.安全で清浄な食品の生産(食品衛生)、3.周辺環境への汚染伝播防止(環境衛生・公衆衛生)、4.安全で清浄な労働環境の確保(労働衛生)といった意味を持っている」と述べている。
 さらに、病原体の種類によって、効果の期待できる消毒薬は違うことに注意したい。

●消毒は継続が大切
 岩田氏は、3種類の踏み込み槽の設置を推奨している。外部から、洗浄槽ゾール剤の槽消毒槽の順番に設置する方法だ。
 牛舎専用長靴・作業衣服の設置、これは外部から農場に出入りする人専用に農場が用意すること(本誌5月号・P.19参照)。手指の消毒は、作業には必ず手袋を使用、さらに外部の人と接するときは作業服で会うことを避けること、などが基本となる。
 基本的な消毒手順は以下であり、「消毒は継続が大切」と締めくくっている。
1 除糞、機具の片付け・取り外し
2 洗浄
3 乾燥
4 消毒剤撒布
5 乾燥
6 器具類取り付け
7 踏み込み消毒槽の設置
8 車両消毒
9 媒介者(害虫、ネズミ、カラスなど)駆除

《参考》
1)口蹄疫:豚や牛、羊など偶蹄類の哺乳動物に感染するウイルス性の家畜病。発症すると口と蹄に水疱ができて発熱、やせ細って死ぬこともある。アジア、アフリカなどでも発生が報告され、急性で感染力が強い家畜病として、各国は厳しい防疫体制をとっている。1997年と1999年に台湾で発生。国内では92年ぶりに2000年3月、宮崎市の肉牛農家で感染しているのが確認された。家畜伝染病に指定され、「海外悪性伝染病防止要領」に基づき防疫される。
2)「酪農現場における防疫対策と具体的実践例」岩田隆、バイエル薬品(株) 2010年3月16日
3)セミナーレポート「忍び寄り、伝播する病原体の侵入を防げ」呉克昌、Dairy Japan、2010年3月号

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