エネルギーの自給を

バイオマスプラントというと、大規模農家のお話と思う方が多いと思います。実際、私もそうしたイメージを持っていました。
しかし、先日お邪魔した兵庫県のY牧場は経産牛40頭、育成牛20頭規模でバイオマスを導入しています。
Y牧場は神戸市の閑静な住宅街に隣接した牧場。そのため、環境対策には必然的に力が入ります。
牛舎で出た糞尿は固液分離し、固形分は堆肥化、液分はバイオマスの原料となります。また、野菜くずや排水も原料に。
それらをバイオマスユニットで加温・発酵させ、メタンガスを回収します。このメタンガスをボイラーの熱源などとして利用しています。
消化液は液肥として自家産野菜の栽培に利用するほか、近隣の耕種農家や水稲農家でも利用され、その質は高く評価されています。
Yさんは持続可能な農業のためには、循環可能な農業にすべきと言い、さらに「いつ、どんな災害が起こるかわからない」とも言い、エネルギーの自給も高めたいと話してくれました。
詳細はDairy Japan12月号で。

シカ柵

北海道ではエゾシカによる農業被害が常態化しています。
釧路管内のI牧場は昨年、高額の投資を覚悟し、約40haの更新草地の周囲にシカ柵を張り巡らせました。
すると、「新播はこれほどきれいに生え揃うものなのか!」とIさんは驚き、「反収が2~3割増えた!」とさらに驚いたと言います。
そして、「鹿はリード(カナリーグラス)を食べない。つまり鹿が食べ残した栄養価の低いリードを牛に喰わせ、栄養価を上げるために購入飼料を増やしてコストを上げているようなものだ」と嘆いていました。
粗飼料自給率を上げるためには、鳥獣被害対策事業の拡充も必要ですね。

お金をかけるべきところはどこ?


飼料コストの高止まりによって、酪農経営は厳しい局面を迎えています。そんなとき、コストダウンはもちろん大事ですが、中期的に経営基盤を強化する投資も同時に考えたいもの。
そこで先日、本誌でおなじみの広島大学・杉野利久先生らと経営改善をテーマに座談会を開きました。
都府県では、導入牛によって乳牛を更新し、F1やET産仔で現金収入を得る経営も見られます。しかし、子牛と初妊牛の価格バランスは以前とは異なり、今ではそうしたモデルでは導入が厳しく、更新が進まないケースも。
そこで、投資すべき部分として杉野先生は自家育成と長命連産をあげました。
もちろん、導入主体の経営をいきなり自家育成型に切り替えるのは、初期の施設・設備投資、そして資金の回転の変化からリスキーなもの。段階的に自家での育成割合を増やすという前提。
そのうえで杉野先生は、育成頭数を少なくすることも大切だと言います。
具体的には、飼養管理技術の向上によって、平均産次を伸ばすこと、そして哺育・育成管理を向上させて初産分娩月齢を適正化させること(多くは短縮の方向へ)。
初産分娩月齢を適正化させるには、闇雲に初回授精を早めるのではなく、ターゲット・グロースに基づいて哺育・育成管理を見直すことがポイントと加えます。
平均産次を伸ばし、育成期間を適正化させ、性選別精液などをうまく活用することで必要な育成頭数を絞り込めれば、F1やETによって個体販売の売り上げをあげることも可能です。つまり、自家産後継牛で更新を確保しつつ、現金収入を得るというもの。
経営がひっ迫しているときこそ、さまざまなことを見直すチャンス。ぜひ、ご自身の経営も一度見つめ直してみてはいかがでしょう?

※ターゲット・グロースについては、本誌臨時増刊号『Dairy PREOFESSIONAL VOL/12』の特集Part3に詳しい解説がありますので、ぜひご一読ください。

飼養密度

目標とする飼養密度は搾乳牛群も乾乳牛群もベッド数の85%以内としているK牧場です。
85%の理由を聞くと「自分が牛だったら、このくらいなら安心して寝られるから」と笑うKさん。
85%の搾乳牛舎を見わたすと、なるほど納得。
空いているベッドがすぐそこ・ここにあり、少し歩けば居心地の良い寝床でゆったり寝られます。
高乳量(平均41kg/日)・繁殖好成績(妊娠率34%)は、こうした飼養環境も影響しているはずだと思いました。
詳しくは、本日発売のDairy Japan 10月号で。

散水で環境温度を下げる

最近は雨続きで低かった気温も、久々の晴れでぐんぐん上昇。最高気温は久しぶりに30度に届きそうな東京です。
日々の寒暖差は乳牛にとって大きなストレスですね。
さて、写真は先日訪れたK牧場での一コマ。散水を制御する装置を写したものです。
暑熱期に屋根散水をする事例を目にすることがあります。屋根散水は熱せられた屋根に水を掛けることで、その水が気化するときに熱を奪うことによって、牛舎を冷やす効果を狙ったもの。適切な使用では、牛舎内の湿度を上げることなく環境温度を下げることが期待できるものです。
K牧場は、この散水システムを牛舎の屋根以外にも、牛舎周辺のコンクリート部分や道路(許可を得て)にも設置しています。牛舎の周辺で蓄熱しやすい部分を冷やすことで、牛舎内温度はさらに下げることができるのだとか。
秋の足音が聞こえはじめる時期ですが、毎年夏はやってきます。暑熱対策の参考にされてみてはいかがでしょう?