世界の穀物はすでに逼迫している:自給飼料活用型TMRセンター情報交換会、開く

2011 年 12 月 20 日

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12月20日(火)、「自給飼料活用型TMRセンターに関する情報交換会」が都内で開かれた(共催:畜産草地研究所、全国酪農業協同組合連合会:全酪連)。参加者は全国から170名余。

今回の情報交換会は、自給飼料と食品副産物であるエコフィードを有効に活用しているTMRセンターへの期待を込めて開かれたもの。現在、全国のTMRセンターは92(平成21年度)。農水省では、平成32年度の粗飼料自給率目標を100%、濃厚飼料自給率19%、飼料全体で38%(平成20年度概算は26%)とし、そのためにエコフィードの利用量を年間50万TDNトン(同22年度は25万TDNトン)に置き、エコフィード利用の増産対策として、地域未利用資源の利用拡大、そのマッチング・システムの構築とその実証試験への支援を行なうとしている。

基調講演で、全酪連・酪農経営アドバイザーの三輪達雄氏は、3月の震災後の国内の飼料事情を振り返るとともに、世界の食と穀物の情勢を分析・報告した。それによると、今後、アジアとアフリカの人口増大が見込まれる中で、新たな農地開発の余地は少なく、また人類は所得増大とともに肉食になることから、畜産物の生産に必要な穀物はすでに逼迫状況にあり、近年の穀物価格の高騰はエタノール生産によるものだけではない、と強調。そのうえでグローバル化とは、為替が日本の畜産経営を左右することを意味しており、コスト競争では限界があるので、消費者重視で飼料自給率の向上(米の利用など)や未利用資源の飼料化で、日本型の酪農による循環型農業を構築することが大事、などと述べた。

エコフィード利用畜産物認証制度について、中央畜産会の岡部由美子氏が同制度の背景と目的などを解説し、2つの事例を紹介した(製パン、豚肉)。同制度の最も重要な条件は、商品の生産から販売までのルートを特定できることで、各段階で分別や専用化が求められる。エコフィード利用畜産物に期待されるのは、資源循環型畜産への理解の醸成と、食品残渣の飼料化により畜産物の生産と販売が一連のチェーンでつながることで、リサイクルループがつくれることと解説した。

事例紹介では「牛用発酵TMR飼料におけるエコフィード活用への取組」(福島県酪農協・岡正宏氏)、「ビール粕・焼酎粕等を利用したTMRセンターの取組み」(大分県酪農協・築城圭一郎氏)、「TMR素材としてのトウフ粕製造の取組み」(太子食品工業株式会社日光工場・井戸端敏見氏)が報告し、エコフィードの利用者側と食品残渣を出す側との良い出会い大切で、それが互いに歩んでいける道だろう、と述べた。

同情報交換会は21日も開かれ、「米DDGS」の利用研究などについて報告される予定。(文責:関東支局)

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